
現場を歩いていると、いろいろなところに改善のヒントがあります。
「ここ、ちょっと危ないな」
「この表示、見えにくいな」
「新人さん、ここでよく迷っているな」
「リフトがここを曲がる時、少し怖いな」
おそらく、こうしたことに最初に気づくのは、本部の人ではありません。
外部の専門業者でもありません。
毎日、その現場で働いている人です。
気づいているのに、変わらない。
不思議なのはここです。
現場の人は、危険な場所を知らないわけではありません。
むしろ、よく知っています。
「あそこは以前にもヒヤリハットがあった」
「繁忙期になると、ここに荷物が置かれる」
「夕方になると、この場所は見えにくくなる」
そんな話を、現場へ行くとたくさん聞きます。
ところが、その気づきが、なかなか改善につながらない。
なぜでしょう。
私は、現場の人に改善する意識がないからではないと思っています。
気づいてから、改善するまでの時間が長すぎる。
そこに問題があるのではないでしょうか。
例えば、あるスタッフが、
「ここに大きな停止表示があればいいのに」
と気づいたとします。
でも、その場ですぐ作れるわけではありません。
上司に相談する。
どんなものがいいか考える。
既製品を探す。
なければ業者を探す。
見積もりを取る。
予算を確認する。
発注する。
施工日を決める。
そうしているうちに、数週間が経ってしまうことがあります。
小さな改善であれば、
「そこまでしなくてもいいか」となってしまうこともあるでしょう。
そして結局、
「注意してください」
「気をつけましょう」
で終わってしまう。
これでは、せっかくの現場の気づきが消えてしまいます。
パウチが広がった理由も、そこにあると思います。
前回紹介した、
パソコンで作って、
コピー機で印刷して、
ラミネートして貼る表示。
なぜ、これほど多くの現場に広がったのでしょう。
安いから。
簡単だから。
それもあると思います。
でも、一番大きいのは、
気づいた人が、自分たちですぐ作れたから ではないでしょうか。
「ここに表示が必要だ」
と思ったら、今日作れる。
場合によっては、その日のうちに貼れる。
これは、現場改善にとって非常に大きなことです。
ただ、できることには限界があります。
A4サイズでは、遠くから見えない。
床には貼れない。
大きな扉には小さすぎる。
光が当たれば反射する。
テープで留めれば剥がれてくる。
そして何より、「もっとこうしたい」と思っても、
作れるものの範囲とそれを使える場所に限りがあります。
つまり、現場にはすでに、
自分たちで改善したいという文化がある。
しかし、「作れるもの」と「使える場所」が限られていた。
私は、そこに次の内製化が必要になる理由があると思っています。
もし、その場で試せたらどうでしょう。
例えば、
「この表示では小さい」という意見が出た。
では、もっと大きくしてみる。
「黄色より赤の方が目立つのでは?」
では、作って比べてみる。
「外国人スタッフには文字だけでは分かりにくい」
では、ピクトグラムを入れてみる。
「ここでは見る方向が違う」
では、向きを変えてみる。
作る。
貼る。
見る。
聞く。
変える。
また試す。
これができれば、
現場改善は、「何年かに一度行う仕事」ではなくなります。
日々の仕事の中に入ってきます。
そして、私はここが一番大事だと思っています。
改善するのは、所長だけではありません。
安全管理者だけでもありません。
リフトに乗っている人。
ピッキングをしている人。
新人を教えている人。
荷物を運んでいる人。
その場所を毎日使っている人だからこそ、気づけることがあります。
「こんな表示があればいい」
「ここを変えた方がいい」
そうした意見を出して、実際に形になる。
すると、どうでしょう。
おそらく、次の気づきも言いたくなると思います。
「だったら、あそこも変えませんか?」
「こっちも分かりにくいですよ」
「この方が新人には分かりやすいと思います」
改善に参加する人が増えていく。
これは、#13で書いた「チームワーク」にもつながってきます。
内製化の価値は、安く作ることだけではない。
もちろん、外注費を抑えられる。
必要な時に作れる。
それも大きなメリットです。
でも私は、それ以上に大きいのは、
改善の主導権を、自分たちで持てること
だと思っています。
本部から指示が来るまで待つ。
業者から提案されるまで待つ。
既製品が発売されるまで待つ。
そうではなく、現場で気づいたことを、現場から改善していく。
そして、うまくいった改善を記録する。
別の拠点でも試す。
さらに改善する。
その知識を企業の中に残していく。
そうなれば、現場で生まれた小さな気づきが、
一つの拠点だけで終わらず、企業全体の安全対策へ育っていきます。
「気づく人」がいる会社は、強い。
私はそう思います。
でも、もっと強いのは、
気づいた人が、改善に参加できる会社 ではないでしょうか。
事故が起きてから、大きな対策を始める。
それも必要です。
しかし、毎日の仕事の中で生まれる、
「あれ?」
「ちょっと危ないな」
「こうした方がいいんじゃない?」
そんな小さな気づきを、小さいうちに形にできる。
その積み重ねが、
大きな事故を防ぐことにつながるのではないでしょうか。
現場には、すでに改善する力があります。
必要なのは、その力を発揮できる環境なのかもしれません。
気づいた人が、改善できる。
私は、これからの「内製化」は、
そんな現場をつくるための仕組みであってほしいと思っています。
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