前回は、
「人手不足の時代に必要なのは、人を減らすことではなく、ムダな時間を減らすこと」
というお話をしました。

人手不足。
採用難。
人件費の上昇。
教育にかかる時間。
ベテランへの負担。

こうした課題が大きくなる中で、
現場では「どうすれば少ない人数で回せるか」
という話になりがちです。

もちろん、効率を考えることは大切です。

しかし、すぐに人を減らす話に進む前に、
見直すべきことがあります。

それは、  今いる人の時間が、どこで奪われているのか

ということです。

今回からは、この時間の問題を、
少し経営目線で考えていきたいと思います。

■ 時間損失は、決算書に出にくい

会社の経営では、
売上、粗利、人件費、外注費、材料費、燃料費、設備費など、
さまざまな数字を見ます。

これらは、比較的分かりやすい数字です。

しかし、現場で失われている時間は、決算書には見えにくいものです。

例えば、

道具を探す時間。
置き場所を聞く時間。
歩行帯の荷物をどかす時間。
ドライバーに待機場所を説明する時間。
来訪者を事務所まで案内する時間。
同じ注意を繰り返す時間。
同じ内容を会議で話す時間。

これらは、
「探す費用」
「聞く費用」
「説明する費用」
という項目で出てくるわけではありません。

だから、見落とされやすい。

しかし、その時間にも人件費はかかっています。

■ 現場の小さな時間は、会社の力を削っている

一回の確認や説明は、数十秒から数分かもしれません。

それだけを見ると、大きな問題には見えにくいと思います。

しかし、現場ではそれが毎日繰り返されます。

毎日、誰かが探している。
毎日、誰かが聞いている。
毎日、誰かが説明している。
毎日、誰かが注意している。
毎日、誰かが迷っている。


この積み重ねは、
会社の力を少しずつ削っているのではないでしょうか。

作業が止まる。
管理者の手が止まる。
ベテランの手が止まる。
新人が不安になる。
ドライバーが迷う。
会議で同じ話が出る。

一つひとつは小さくても、
それが日常になると、現場全体の流れが重くなります。

■ 人件費の中に、ムダな時間が埋もれている

人件費は、会社にとって大きな費用です。

だからこそ、人件費をどう考えるかは、経営にとって重要です。

しかし、人件費を見る時に、単に人数や給与だけを見てよいのでしょうか。

大切なのは、その時間が何に使われているかです。

同じ1時間でも、出荷作業に使われる1時間と、
探し物に使われる1時間では意味が違います。

改善を考える1時間と、同じ注意を繰り返す1時間でも意味が違います。

新人に必要な教育をする1時間と、
毎回同じ場所を案内する1時間でも意味が違います。

つまり、経営として見るべきなのは、「人が何人いるか」だけではなく、

👉 その人たちの時間が、現場でどう使われているか

ではないでしょうか。

■ 管理者の時間が奪われると、改善が止まる

特に大きいのは、管理者の時間です。

管理者は、現場全体を見る立場です。

人員配置。
作業進捗。
安全確認。
荷主対応。
トラブル対応。
新人教育。
改善活動。

これらを進めるためには、考える時間が必要です。

しかし、現場が分かりにくいままだと、管理者は細かな対応に追われます。

「これはどこに置きますか?」
「ドライバーはどこで待ちますか?」
「この通路は通っていいですか?」
「道具が見つかりません」
「また歩行帯に荷物があります」

こうした対応が続くと、管理者は忙しいのに、改善に使う時間が残りません。

管理者が忙しいことと、現場改善が進んでいることは違います。

ここは、経営としても見落としてはいけない部分だと思います。

■ 時間損失は、安全にもつながっている

時間の問題は、効率だけの話ではありません。

安全にも関係します。

忙しい。
探している。
迷っている。
確認している。
誰かに聞いている。
急いでいる。

この状態では、人の注意力は落ちやすくなります。

また、作業が遅れると、取り戻そうとして無理な動きが出ることもあります。

近道をする。
仮置きする。
確認を省く。
リフト動線に近づく。
急いで通路を横切る。

もちろん、すべてが事故につながるわけではありません。

しかし、現場の時間に余裕がなくなることは、
安全面でも注意すべきことではないでしょうか。

■ 経営が見るべきは、現場の分かりにくさ

では、経営は何を見るべきなのでしょうか。

私は、現場の分かりにくさを見ることが大切だと思います。

なぜ、毎回聞かれるのか。
なぜ、毎回探しているのか。
なぜ、毎回注意しているのか。
なぜ、毎回同じ会議になるのか。
なぜ、初めて来た人が迷うのか。

その原因が、人の意識だけにあるとは限りません。

置き場所が分かりにくい。
歩行帯が見えにくい。
待機場所が決まっていない。
受付までの案内が弱い。
停止位置が曖昧。
通ってよい場所と危険な場所の境界が分かりにくい。

こうした現場の分かりにくさが、時間損失を生んでいる可能性があります。

■ 表示で変えられる時間がある

もちろん、現場の時間損失を、
すべて表示だけで解決できるわけではありません。

設備の問題。
人員配置の問題。
作業手順の問題。
システムの問題。
取引条件の問題。

いろいろな要因があります。

ただ、その中には、床・壁・扉・柱などのサイン表示で、
見れば分かるようにできる部分もあるはずです。

歩く場所。
止まる場所。
置く場所。
戻す場所。
待機場所。
受付の場所。
危険な場所。
立ち入ってはいけない場所。

これらが見れば分かるだけでも、
毎回説明する時間、確認する時間、迷う時間を
減らせる場面はあるのではないでしょうか。

■ 次回予告

次回は、
人件費を考える前に、現場で奪われている時間を見る
というテーマで考えていきます。

人が足りない。
人件費が高い。
採用が難しい。

そう考える前に、
今いる人の時間が、
どこで失われているのか。

次回は、「人件費を削る前に、現場で奪われている時間を見る」

をテーマに考えていきます。

■ 最後に

現場で失われている時間は、決算書には見えにくいものです。

探す時間。
聞く時間。
確認する時間。
説明する時間。
注意する時間。
待つ時間。

しかし、その時間は、人件費の中に埋もれながら、
現場の流れや管理者の余力を少しずつ削っているかもしれません。

だからこそ、時間損失は単なる現場の困りごとではなく、
経営としても見ておきたい課題だと思います。

大きな仕組みを一気に変える前に、
まずは現場で繰り返されている
「探す」「聞く」「確認する」「説明する」を見直す。

その中には、床・壁・扉・柱などに表示すれば、
見れば分かるようにできるものがあるかもしれません。

見えない時間損失に気づくこと。

そこから、現場の時間を守る取り組みは始まるのではないでしょうか。

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