「募集を出しても、人が来ない」

「せっかく採用しても、すぐ辞めてしまう」

物流や製造の現場では、そんな話を聞くことが珍しくなくなりました。

人手不足だから採用を強化する。
求人条件を見直す。
給与を上げる。

もちろん、どれも大切なことです。

でも、その前に一つ考えてみたいことがあります。

いまの現場は、新しく入った人が働き続けられる現場になっているでしょうか。

■ 採用できれば、人手不足は解決するのか

一人採用できれば、一人増える。

数字だけを見ればそうです。

ところが、新人が現場に入れば、仕事を教える人が必要になります。

「これはここに置いて」
「この場合は先にこちらをやって」
「そこは危ないから通らないで」
「分からなかったら聞いて」

新人は一つずつ覚えていきます。

しかし、その新人が数か月後に辞めてしまったらどうでしょう。

また採用する。
また教える。
また現場の誰かが時間を使う。

これを繰り返していたら、人を採用しているのに、現場はいつまでたっても楽になりません。

■ 新人には「見えていないもの」がたくさんある

長く働いている人には当たり前でも、新人には分からないことがあります。

どこを通るのか。

どこで待つのか。

誰に聞けばいいのか。

何を先にすればいいのか。

どこまで自分で判断していいのか。

そして新人は、仕事だけを見ているわけではありません。

「この先輩、忙しそうだな」

「また聞いたら嫌がられるかな」

「さっき教えてもらったことと、研修で聞いたことが違うな」

そんなことも考えながら働いています。

だから、一つ分からないことが出てくると、その後の説明まで分からなくなることがあります。

教える側は、「ちゃんと教えた」と思っている。

新人側は、「途中から何を言っているのか分からなかった」と思っている。

同じ場所にいるのに、見えている現場が違うのです。

■ 「人が足りない」と「人が続かない」は別の問題

ここは分けて考えた方がいいのかもしれません。

応募そのものが少ないのであれば、採用の問題です。

でも、採用した人が続かないのであれば、現場側にも考えることがあります。

教育の方法なのか。

人間関係なのか。

仕事の分かりにくさなのか。

ルールと現場のズレなのか。

あるいは、それらが少しずつ重なっているのか。

辞める理由をすべてなくすことはできません。

しかし、「新人がどこで迷っているのか」を見ることはできます。

■ 人を増やす前に、迷いを減らす

人手不足になると、どうしても「あと何人必要か」という話になります。

でも、これからはもう一つ、

「今いる人が迷わず働ける現場になっているか」

も考える必要があるのではないでしょうか。

新人が迷うたびに先輩を呼ぶ。

先輩が作業を止めて説明する。

新人によって教え方が変わる。

ベテランが休めば分からないことが増える。

これは単なる新人教育の問題ではありません。

現場そのものの仕組みの問題でもあります。

■ 「採る会社」から「続けられる会社」へ

これから人が簡単に増えないのであれば、

採用する力だけではなく、

入ってきた人が仕事を覚え、迷わず、働き続けられる環境をつくる力

も会社の強さになると思います。

人手不足だから、人を探す。

もちろん必要です。

でも、その前に一度、現場を新人の目で見てみる。

「ここ、分かるかな?」

「これ、初めて見た人でも判断できるかな?」

「先輩がいなくても動けるかな?」

そんな問いから見えてくるものがあるはずです。

人が足りない。

その言葉の前に、

人が続けられる現場になっているか。

これからの現場づくりでは、こちらも同じくらい大切な問いになっていくのではないでしょうか。

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