一つの荷物が、工場から納品先へ届くまで。

そこには、いくつもの会社と人が関わっています。

荷主の工場で積み込む。
運送会社が運ぶ。
物流センターで荷降ろしする。
別のトラックに積み替える。
納品先の工場や倉庫で荷受けする。

ところが、それぞれの現場には、それぞれのルールがあります。

トラックを止める場所。
ドライバーが待つ場所。
荷物を置く場所。
フォークリフトが走る場所。
人が歩いてよい場所。

現場が変われば、ルールも変わります。

では、その現場に初めて来た人は、どうやってそのルールを知るのでしょうか。

🔳「分からなければ聞く」が当たり前になっていないか

多くの工場や倉庫では、受付で説明したり、注意事項を書いた紙を渡したり、

壁にルールを掲示したりしています。

それでも現場では、

「どこで待てばいいですか?」

「ここにトラックを止めていいですか?」

「この荷物はどこに置けばいいですか?」

「ここを歩いていいですか?」

という確認が起こります。

そのたびに誰かが説明し、案内します。

一つひとつは数分かもしれません。

しかし、毎日多くのドライバーや協力会社の人が出入りする現場では、

その時間が積み重なります。

それ以上に気になるのは、

「分からない状態で、人が現場を動いている」 ということです。

🔳ルールを書いておくことと、伝わることは違う

工場や倉庫を訪問すると、注意書きや安全ルールはたくさんあります。

パウチされた紙。

シール。

看板。

壁に貼られた注意事項。

決して、何もしていないわけではありません。

問題は、それが実際の行動につながっているかです。

例えば、フォークリフトとの交差地点。

壁に「構内では安全確認をしてください」と書かれているよりも、その場所に大きく、

STOP

左右確認

と表示されている方が、次に取る行動は分かりやすくなります。

待機場所も同じです。

「指定された場所で待機してください」と書くのではなく、

ここが待機場所と、その場所自体を示す。

私はこれを、「ルールの場所化」と考えています。

🔳全部の会社で同じルールにする必要はない

もちろん、荷主、運送会社、物流倉庫、荷受け先で、すべての安全ルールを

統一することは現実的ではありません。

建物も違います。

設備も違います。

扱う荷物も違います。

人やフォークリフトの動線も違います。

ですから、必要なのは、「同じルールにすること」ではないと思います。

共通にできるのは、もっとシンプルな考え方です。

初めて来た人でも、その場所で何をすればいいのかが見れば分かる。

これなら、それぞれの会社が自社の現場に合わせて取り組むことができます。

🔳STOP・待機・歩行帯・置場は「行動」を伝える

STOPなら、止まる。

待機なら、そこで待つ。

歩行帯なら、そこを歩く。

立入禁止なら、入らない。

置場なら、そこに置く。

これは単なる「注意喚起」ではありません。

その場所で取ってほしい行動を、直接伝えているのです。

文章を読んで理解してもらうのではなく、

場所を見て、行動してもらう。

新人、外国人材、協力会社、そして初めて訪れるドライバーが増えるほど、

この違いは大きくなると思います。

🔳「わかる化」は確認する時間も減らす

ここでもう一つ重要なのが、時間です。

現場がわかる化されていれば、

「どこですか?」

「ここでいいですか?」

「次はどうすればいいですか?」

という確認を減らすことができます。

確認する側だけではありません。

答える社員の時間も減ります。

つまり「わかる化」は、安全対策であると同時に、

現場から「確認する仕事」を減らす仕組み でもあります。

そして、忙しいときほど、この差は大きくなります。

🔳一つの会社だけでは、荷物は届かない

前回、第11回では「安定供給の維持」について考えました。

物流は、一社だけで完結していません。

荷主が出荷する。

運送会社が運ぶ。

倉庫が受け入れる。

そして荷受け側へ届ける。

どこか一つが止まれば、その影響は次の現場へ伝わります。

だからこそ、安定供給を考えるとき、

システム同士をつなぐだけではなく、

現場を移動する「人」が、安全に動けること

も考えておく必要があるのではないでしょうか。

🔳サプライチェーンを「わかる化」する

すべての会社で、同じ床表示にする必要はありません。

同じ色にする必要もありません。

同じルールにする必要もありません。

しかし、「その場所で何をすればいいのかが、見れば分かる」

という考え方は共有できます。

荷主。

運送会社。

物流倉庫。

荷受け側。

それぞれの現場が少しずつ「わかる化」されれば、人が会社をまたいで移動しても、

迷う時間や確認する時間を減らせます。

それは安全対策だけではありません。

物流全体の時間を守ることにもつながります。

デジタルで情報をつなぐ時代だからこそ、現場では人の行動もつなぐ。

そのために必要なのは、大きな仕組みだけではありません。

「ここでは、こう動く」ことが、その場所を見れば分かる。

そんな現場を一つずつ増やしていくことが、これからの安定供給を支える一つの方法ではないでしょうか。

次回 第13回

デジタル化が進むほど、「人に残す情報」が重要になる

― システムの中にあるルールを、現場にも残しておく ―

システムが正常に動いているときは、画面の指示に従えば仕事が進みます。

では、その画面が突然消えたら、人は何を見て動くのでしょうか。

次回は、この問題を考えてみます。

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