
今回からは、少し視点を変えて、
“わかる化”と“時間”の関係について考えていきたいと思います。
これまで、このブログでは、
繁忙期に崩れない現場づくりについて考えてきました。
荷物が増える。
トラック便数が増える。
初めて来るドライバーが増える。
応援人員が増える。
仮置きが増える。
バース前が詰まる。
こうした問題の根本には、現場で起きる「迷い」があります。
そして、この「迷い」は、安全や効率だけでなく、
現場の時間も奪っています。
■ スーパーで商品を探した経験はありませんか
少し身近な例で考えてみます。
スーパーで買い物をしている時、
欲しい商品が見つからないことがあります。
「あれ、どこにあるんだろう」
「この棚かな」
「前はここにあった気がする」
「別の売場かな」
そう思いながら、売場を何度も歩く。
探しても見つからない。
少し時間が過ぎる。少しイライラもする。
そこで、近くにいるスタッフに声をかけます。
「すみません、〇〇はどこにありますか?」
するとスタッフの方が、
「こちらです」
と言って、商品の場所まで案内してくれることがあります。
お客様から見ると、とても親切な対応です。
日本らしい丁寧な接客だとも言えます。
道を聞かれたら、言葉だけでなく、近くまで案内する。
困っている人がいれば、親切に対応する。
これは、とても良い文化だと思います。
■ しかし、時間という視点で見るとどうか
ただし、少し視点を変えると、別の見方もできます。
お客様は、商品を探すために時間を使っています。
見つからずに迷い、売場を歩き回り、
少しイライラしている。
そして、スタッフに尋ねる。
スタッフは、今やっていた作業を止めます。
商品の場所まで案内します。
また元の作業場所に戻ります。
もちろん、これは接客としては正しい対応です。
しかし、もし同じような質問が一日に何度も発生しているとしたら、
どうでしょうか。
それは単なる親切な対応ではなく、
👉 売場のわかりにくさが、お客様とスタッフの時間を奪っている状態
とも言えるのではないでしょうか。
■ スーパーを悪い例として見ているわけではない
ここで誤解しないでいただきたいのは、
スーパーを悪い例として取り上げているわけではありません。
スーパーは商品数が多く、季節商品もあり、新商品も入り、
棚替えも頻繁にあります。
売場を常に完璧に分かりやすくすることは、
決して簡単ではありません。
それでも、この日常的な光景には、
現場改善の大切なヒントがあります。
それは、
👉 人が迷う場所には、改善の種がある
ということです。
■ 物流現場でも同じことが起きている
これは、物流現場や工場でも同じです。
「受付はどこですか?」
「待機場所はどこですか?」
「この荷物はどこに置けばいいですか?」
「この道具はどこに戻せばいいですか?」
「ここを通ってもいいですか?」
「どのバースに行けばいいですか?」
「事務所はどこですか?」
こうした質問は、日常的に発生していないでしょうか。
聞かれた人は、親切に答えます。
「こちらです」
「あそこです」
「そこではなく、こっちです」
「今はここに置いてください」
一見すると、現場がうまく対応しているように見えます。
しかし、時間という視点で見ると、違うものが見えてきます。
■ 一つの迷いが、二人分の時間を奪う
誰かが迷って質問する。
その瞬間、聞いた人の時間が止まります。
そして、答えた人の時間も止まります。
もし案内が必要であれば、
答えた人は本来の作業場所を離れます。
説明する。
案内する。
戻る。
その間、本来の仕事は止まります。
つまり、
👉 一つの迷いが、二人分の時間を奪うことがあるのです。
しかも、現場ではそれが一度で終わらないことがあります。
同じ場所で、同じ質問が繰り返される。
同じ案内を何度もする。
同じ注意を何度もする。
同じ説明を何度もする。
この積み重ねが、現場の時間を少しずつ奪っていきます。
■ 親切に答えることと、改善しないことは別
もちろん、聞かれたら親切に答えることは大切です。
困っている人を放っておくわけにはいきません。
しかし、同じ質問が何度も繰り返されているなら、
そこで考えるべきことがあります。
それは、
👉 なぜ、その質問が繰り返されているのか です。
受付が分かりにくいのか。
待機場所が見えにくいのか。
置き場が曖昧なのか。
案内表示が小さいのか。
床のラインが消えているのか。
ルールが口頭だけなのか。
質問は、現場からのサインです。
「分かりにくい」
「迷いやすい」
「伝わっていない」
という現場からのメッセージでもあります。
だからこそ、
👉 質問は、改善の種 だと思うのです。
■ 聞けば分かる現場は、親切な現場
「聞けば教えてくれる現場」は、
決して悪い現場ではありません。
むしろ、スタッフが親切で、
周囲に気を配り、困っている人に対応できる現場です。
それは大切なことです。
しかし、人手不足が進み、
現場の負担が増え、
管理者も作業者も余裕がなくなっている中で、
いつまでも「聞けば教える」に頼り続けられるでしょうか。
聞かれるたびに、誰かの作業が止まる。
聞く人も、答える人も、時間を使う。
この状態が毎日続いているなら、
改善の余地があるはずです。
■ 聞かなくても分かる現場は、時間を奪わない
これから必要なのは、
👉 聞かなくても分かる現場 です。
受付が分かる。
待機場所が分かる。
歩く場所が分かる。
置く場所が分かる。
戻す場所が分かる。
入ってはいけない場所が分かる。
次に何をすればよいかが分かる。
この状態ができれば、質問は減ります。
説明も減ります。
案内も減ります。
注意も減ります。
その結果、
現場の時間が守られます。
つまり、人に聞けば分かる現場は、親切な現場。
聞かなくても分かる現場は、時間を奪わない現場。
この視点が大切ではないでしょうか。
■ 時間の損失は、見えにくい
現場で失われている時間は、意外と見えにくいものです。
数分の案内。
数十秒の確認。
一度だけの説明。
少しだけの探し物。
ちょっとした注意。
一つひとつは小さく見えます。
しかし、それが毎日、何度も繰り返されているとしたら、
大きな時間になります。
例えば、
- ドライバーに受付を案内する時間
- 来訪者に事務所の場所を説明する時間
- 道具の置き場所を教える時間
- 仮置き場所を指示する時間
- 物置禁止を注意する時間
- 歩行帯の荷物をどかす時間
これらはすべて、
本来なら減らせる可能性のある時間です。
■ 人件費を削る前に、奪われている時間を見る
人手不足が進む中で、
多くの企業が人員配置や人件費に悩んでいます。
物価上昇。
利益率の低下。
人件費の上昇。
採用難。
こうした状況の中で、
「どう人を減らすか」
「どう効率化するか」
という話になりがちです。
しかし、その前に見るべきことがあります。
👉 今いる人の時間が、どこで奪われているのか
迷う時間。
探す時間。
聞く時間。
答える時間。
注意する時間。
やり直す時間。
どかす時間。
ここを減らすことができれば、
人を減らす前に、現場の余裕を取り戻せるかもしれません。
■ わかる化は、時間を守る対策でもある
わかる化というと、
安全対策や注意喚起のイメージが強いかもしれません。
もちろん、それは重要です。
しかし、わかる化にはもう一つの役割があります。
それは、 現場の時間を守ることです。
見れば分かるから、迷わない。
見れば分かるから、聞かなくて済む。
見れば分かるから、説明が減る。
見れば分かるから、注意が減る。
見れば分かるから、やり直しが減る。
これは、安全だけでなく、
現場の生産性にも関わる話です。
■ 次回予告
次回は、より現場に近い例として、
歩行帯の“ちょい置き”について考えます。
歩行帯に荷物が置かれる。
後から来た人がそれをどかす。
別の場所に移動する。
通るために迂回する。
管理者が注意する。
また同じことが繰り返される。
これは単なる「物置禁止」の問題ではありません。
👉 誰かの時間を奪っている問題です。
次回は、
👉 「歩行帯の“ちょい置き”が、なぜ時間を奪うのか」
をテーマに考えていきます。
■ 最後に
聞けば教えてくれる現場は、親切な現場です。
しかし、同じ質問が何度も繰り返されているなら、
その裏側には、わかりにくさがあるかもしれません。
そして、そのわかりにくさは、
迷った人の時間と、答えた人の時間を奪っています。
これからの現場改善では、
安全だけでなく、時間にも目を向ける必要があります。
人を増やすことが難しい時代。
人件費を簡単に増やせない時代。
だからこそ、
👉 人の時間を奪わない現場づくり
が大切になるのではないでしょうか。
人に聞けば分かる現場から、見れば分かる現場へ。
そこに、これからの“わかる化”の価値があると思います。
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