
ここまで「次の内製化」について、いろいろと考えてきました。
必要な表示を自分たちで作る。
現場で使ってみる。
働く人の声を聞く。
改善する。
そして、その結果を残し、他の拠点にも共有する。
ここまでできれば、現場の改善力はかなり高まると思います。
ところが、実際の現場では、
「分かっているけれど、なかなかできない」 という声も聞きます。
なぜでしょうか。
私は、そこには大きく3つの「壁」があると思っています。
壁① 「時間がない」
これは、一番多い理由かもしれません。
「安全対策が大切なのは分かっています」
「表示も直したいと思っています」
「でも、そこまで手が回りません」
物流現場は、毎日の仕事を止めることができません。
トラックが来る。
荷物が動く。
フォークリフトが走る。
人が足りない。
急な対応も入る。
そんな中で、「今度、この表示を作り直そう」
と思っていても、どうしても後回しになります。
しかし、少し違う見方もできると思います。
時間がないから内製化できないのではなく
時間がないからこそ内製化が必要なのではないでしょうか。
外部業者に頼めば、
業者を探す。
説明する。
現場を見てもらう。
見積もりを取る。
予算を申請する。
日程を調整する。
施工してもらう。
一つの表示を変えるだけでも、かなりの時間がかかります。
それなら、
現場で必要だと思ったときに、
自分たちですぐ作れる方が早い。
内製化は仕事を増やすためではなく、
改善にかかる時間を減らすための仕組み
だと考えた方がいいと思います。
壁② 「自分たちに作れるのか」
これも大きな壁です。
「パソコンは得意じゃない」
「デザインなんてやったことがない」
「失敗したらどうするの?」
こうした不安は当然だと思います。
しかし、安全表示は広告ではありません。
格好いいデザインを作ることが目的ではない。
大切なのは、必要な人に、必要な情報が伝わることです。
例えば、
「止まれ」
「立入禁止」
「フォークリフト注意」
「ここに物を置かない」
こうした基本的な表示であれば、
会社としてテンプレートを用意しておけばいい。
現場は、
文字を変える。
色を変える。
大きさを変える。
ピクトグラムを選ぶ。
それくらいから始めてもいいと思います。
最初から100点を目指す必要はありません。
使ってみて、
「もう少し大きい方がいい」
「ここでは赤より黄色の方が見える」
「文字だけでは外国人スタッフに伝わりにくい」
と分かれば、
また変えればいい。
むしろ、簡単に作り直せることこそ、内製化の強みです。
壁③ 「他の仕事が優先される」
これが、一番難しい問題かもしれません。
安全対策は重要です。
でも、今日やらなければ荷物が出ない仕事ではありません。
売上が上がる仕事でもありません。
だから、「時間ができたらやろう」 になりやすい。
そして、時間はなかなかできません。
その結果、
表示が剥がれている。
ラインが消えている。
パウチが汚れている。
動線が変わったのに、昔の表示が残っている。
それでも、大きな事故が起きなければ、そのままになってしまう。
そして事故が起きると、
突然、「すぐに対策してください」となる。
私は、この繰り返しを何度も見てきました。
だから「担当者のやる気」に任せてはいけない。
安全意識の高い所長がいる。
改善が好きな担当者がいる。
そういう現場は、どんどん良くなります。
しかし、その人が異動したらどうでしょう。
忙しい所長に代わったら?
改善が苦手な担当者になったら?
そこで止まってしまうのであれば、
それは会社の仕組みになっていません。
安全対策を個人の熱意に依存させないこと
が非常に重要だと思っています。
必要なのは「仕組み」と「文化」。
例えば、月に一度、現場の表示を確認する。
気になった場所を写真に撮る。
改善案をスタッフから集める。
簡単なものなら、その場で作る。
使ってみて、結果を確認する。
良かった事例は他の拠点と共有する。
こうした流れを、特別な活動ではなく、
日常業務の中に組み込んでしまう。
これが「仕組み」です。
そして、もう一つ必要なのが、
改善しても失敗を責めない文化
だと思います。
「せっかく作ったのに、また変えるの?」
ではなく、
「使ってみたから、もっと良い方法が分かった」と考える。
この違いは大きいと思います。
内製化は、機械を導入すれば完成するわけではありません。
プリンターを導入した。
材料を用意した。
作り方を覚えた。
それだけでは、
数か月後に使われなくなる可能性があります。
重要なのは、誰が、いつ、どんな時に使うのか。
そして、作ったものをどう評価し、どう改善し、どう残すのか。
ここまで決めておくことです。
つまり、
設備だけではなく、運用まで内製化する。
これが必要なのだと思います。
「時間がない現場」だからこそ、仕組みにする。
今回挙げた3つの壁。
時間がない。
自分たちにできるか不安。
他の業務を優先してしまう。
どれも、現場の人の意識が低いから起きる問題ではありません。
むしろ、忙しい現場では当然起こることだと思います。
だからこそ、「もっと安全意識を高めましょう」
だけでは解決しません。
必要なのは、忙しくても改善できる仕組みを会社として作ること。
気づいた人が、すぐに改善できる。
使ってみて、また変えられる。
その知識が残り、別の現場でも使われる。
そして、担当者が変わっても続いていく。
ここまでできれば、
内製化は単なるコスト削減ではありません。
会社が自分たちで安全を改善し続ける力になっていきます。
これからの「次の内製化」に必要な姿だと思っています。
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