前回は、同じ会社なのに、拠点ごとに安全レベルが違っていないか
というテーマで考えました。

複数の倉庫や物流センター、工場を持つ会社では、
現場ごとに建物も違えば、扱う荷物も、人員構成も違います。

そのため、すべての現場を同じ形にする必要はありません。

しかし、安全に対する考え方や、最低限確認すべきポイントまで
拠点ごとにバラバラでよいのか。

そこは別の問題です。

そして、もう一つ気になることがあります。

会社全体で見た時に、どの現場がどのような状態なのかを、誰が把握しているのでしょうか。

■ 「事故が起きていない」は、安全の評価ではない

安全について確認すると、

「最近、大きな事故はありません」

という答えを聞くことがあります。

もちろん、事故が起きていないことは良いことです。

ただ、それだけで現場の安全レベルを判断することはできません。

歩行帯が消えかけている。
フォークリフトと人の動線が交差している。
非常口の前に物が置かれることがある。
新人には分かりにくい場所がある。
ドライバーが現場内で迷っている。

こうした状態があっても、
偶然事故が起きていなければ、数字には表れません。

つまり、事故件数は結果であって、現場の状態そのものではない

ということです。

■ 本社が見ている現場と、実際の現場は同じか

複数拠点を持つ会社では、
安全会議や定例報告が行われていると思います。

事故件数。
ヒヤリハット。
改善件数。
安全教育の実施状況。

こうした数字は大切です。

しかし、報告書だけで現場の状態がどこまで分かるでしょうか。

例えば、

「歩行帯あり」

と報告されていても、

実際には線が薄くなっているかもしれません。

「一旦停止表示あり」となっていても、

荷物に隠れて見えないかもしれません。

「安全表示設置済み」

でも、現場で働く人が見ていなければ、意味は変わってきます。

資料上では対策済み。
しかし、現場では機能していない。

こうした差は、数字だけでは見えにくいものです。

■ 安全担当者だけが知っていればよいのか

現場の安全状態を詳しく知っている人はいます。

所長。
安全担当者。
現場責任者。
ベテランスタッフ。

問題は、その情報がその人たちの中だけにとどまっていないかということです。

「あそこは少し危ない」
「繁忙期になるとここに荷物が出る」
「新人はいつもここで迷う」
「この時間帯だけリフトが集中する」

現場では知られている。

しかし、会社全体では知られていない。

もしそうなら、そのリスクは担当者が異動したり退職したりすると、
一緒に消えてしまう可能性があります。

安全情報も、個人の経験だけに頼らず、
会社として見える形にしておく必要があります。

■ 比較する目的は、順位をつけることではない

拠点ごとの状態を把握するというと、

「A拠点は80点、B拠点は60点」

というような評価を想像するかもしれません。

しかし、私は順位づけが目的ではないと思います。

大切なのは、どこに違いがあるのかを見つけることです。

ある拠点では、人と車両の動線が非常に分かりやすい。

別の拠点では、ドライバーの待機場所がうまく設計されている。

また別の拠点では、新人でも非常時の行動がすぐ分かる。

良いところも、課題もあります。

それを会社全体で見えるようにすれば、

「この取り組みは他拠点でも使えそうだ」という発見も生まれます。

安全状態を把握することは、
悪いところを探すだけではなく、
良い現場を見つけることでもあります。

■ 現場を見る共通の物差しを持つ

前回も触れましたが、すべての現場を同じにする必要はありません。

ただし、見るポイントはそろえることができます。

例えば、

人と車両の動線は分かれているか。
危険箇所は初めての人にも分かるか。
待機場所は明確か。
非常時の行動は見て分かるか。
物を置いてはいけない場所は明確か。
表示は現在の運用と合っているか。

こうした共通の視点があれば、現場ごとの差が見えやすくなります。

そして、

「どの拠点を優先して改善するのか」
「どの事例を横展開するのか」

という判断もしやすくなります。

■ 最後に

会社に複数の現場があるなら、
一つだけ確認してみてもよいと思います。

「今、どの拠点がどのような安全状態なのか、誰が説明できるだろうか」

事故件数だけではありません。

現場そのものの状態です。

良いところ。
気になるところ。
改善が必要なところ。
他拠点へ広げたいところ。

それらが見えている会社と、各現場に任せたままの会社では、
数年後に大きな差が出てくるかもしれません。

安全対策を会社全体の仕組みにしていくなら、

まず必要なのは、現場の状態が見えていること。

そして次に、その情報をどう改善につなげるか。

そこまで考えて初めて、
安全対策は会社全体の力になっていくのではないでしょうか。

次回は、
「安全対策は、誰が決め、誰が動かすのか」
という視点から、現場改善が止まってしまう理由を考えてみたいと思います。

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