前回は、「現場の安全レベルは、誰が把握しているのか」というテーマで考えました。

事故件数だけでは、現場の状態は分かりません。

歩行帯が薄くなっている。
人とフォークリフトの動線が近い。
待機場所が曖昧。
非常時の表示が分かりにくい。

こうした状態は、事故が起きるまで数字に表れないことがあります。

だからこそ、会社として現場を見る共通の物差しを持ち、
どの拠点にどのような課題があるのかを把握することが大切だと書きました。

しかし、ここでもう一つ問題があります。

課題が分かったあと、
誰が「直そう」と決め、誰が実際に動くのでしょうか。

■ 現場では分かっている。でも動かない

現場を訪問すると、

「ここは前から危ないと思っている」
「この線は引き直した方がいい」
「ここに物を置かれると困る」
「新人には分かりにくいと思う」

という話を聞くことがあります。

つまり、問題に気づいていないわけではありません。

それでも、その状態が何か月も、場合によっては何年も続いている。

なぜでしょうか。

よく聞くのが、

「本社に確認しないと分からない」
「予算を誰に上げればいいのか」
「施設側の話なのか、安全担当の話なのか」
「現場だけでは決められない」

という言葉です。

問題は見えている。

しかし、決める人と動く人がつながっていない。

ここに、現場改善が止まる理由の一つがあると思います。

■ 現場責任者だけでは決められないことがある

現場責任者は、毎日現場を見ています。

どこが危ないのか。
どこで人が迷うのか。
どこに荷物が置かれるのか。
繁忙期にどこが詰まるのか。

最もよく知っているのは、現場かもしれません。

しかし、対策には費用がかかります。

施工が必要になる。
設備を止める必要がある。
他部署との調整が必要になる。
建物の管理部門への確認が必要になる。

一定額を超えれば、現場だけでは決裁できないこともあります。

だからといって、

「現場では決められないから仕方がない」

で終わってしまえば、課題は残り続けます。

必要なのは、現場の気づきを、判断できる人まで上げる流れではないでしょうか。

■ 本社だけで決めても、うまくいかない

では、本社で安全対策をすべて決めればよいのでしょうか。

これも違うと思います。

本社が、

「全拠点に同じ表示を設置する」
「すべて同じルールにする」

と決めても、現場条件が違えば使いにくいことがあります。

トラックの入り方も違う。
フォークリフトの台数も違う。
通路幅も違う。
扱う荷物も違う。
作業人数も違う。

つまり、

現場だけでも決められない。
本社だけでも決められない。

この両方をつなぐ必要があります。

現場は「何が起きているか」を伝える。

会社側は、
「何を優先し、どこまで投資するか」を判断する。

そして決まったことを、再び現場で実行する。

この流れが回ることが大切です。

■ 「誰の仕事か分からない」が、一番止まりやすい

安全対策には、いくつもの部署が関係することがあります。

安全担当。
総務。
施設管理。
物流部門。
現場責任者。
設備担当。
場合によっては、経営企画や購買部門。

関係者が多いほど、「これはどこの担当だろう」

という状態が起きやすくなります。

そして、担当が曖昧な問題ほど後回しになります。

危険ではある。
でも、今日すぐ事故が起きるとは限らない。

そのため、日々の出荷やトラブル対応が優先され、
安全改善が少しずつ後ろに回ってしまいます。

結果として、誰も反対していないのに、誰も動かない。

これは、安全対策に限らず、会社の中でよく起こることではないでしょうか。

■ 大切なのは「責任者探し」ではない

ここで重要なのは、「誰が悪いのか」を決めることではありません。

現場責任者が悪い。
本社が遅い。
安全担当が動かない。

そういう話ではないと思います。

見るべきなのは、

課題を見つけたら誰に上げるのか。
誰が優先順位を決めるのか。
誰が予算を判断するのか。
誰が施工や改善を進めるのか。
終わった後、誰が確認するのか。

こうした流れが会社の中で分かっているかどうかです。

改善の流れが見えていれば、
現場から出た小さな気づきも動きやすくなります。

逆に、その流れが曖昧なら、良い提案が出ても止まってしまいます。

■ 安全対策も、会社の仕事として回す

物流現場では、

入荷。
保管。
出荷。
配送。
品質管理。

それぞれに仕事の流れがあります。

誰が受け、誰が判断し、誰が次へ渡すのか。

安全対策も同じではないでしょうか。

現場で気づく。
共有する。
判断する。
改善する。
確認する。
他の現場にも活かす。

この流れができれば、
安全改善は「熱心な担当者が頑張る活動」から、
会社の通常業務の一つに変わっていきます。

担当者が変わっても続く。
所長が変わっても続く。
別の拠点でも同じ考え方が使える。

そこまでできて初めて、
安全対策が会社の仕組みになったと言えるのかもしれません。

■ 最後に

現場改善が進まない時、「必要性が理解されていないから」とは限りません。

必要だと思っている。
危ないことも分かっている。

それでも、

誰が決めるのか。
誰が予算を持つのか。
誰が動くのか。

そこが曖昧なために止まっているケースもあります。

安全対策を現場任せにしない。

同時に、本社だけでも決めない。

現場の気づきと、会社の判断をつなぐ。

そして、決めたことを現場で形にする。

この流れをつくることが、
複数の現場を持つ会社では特に重要になるのではないでしょうか。

安全対策は、誰か一人の仕事ではありません。
しかし、誰が次に動くのかが分からなければ、改善は進みません。

現場の問題を見つけるだけで終わらず、
会社として動かせる状態にしておく。

それが、これからの安全対策では大切になってくると思います。

次回は、「安全対策は、予算がないから進まないのか」
という視点から、費用と優先順位について考えてみたいと思います。

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