
前回は、物流現場の繁忙期には2つの種類があるとお伝えしました。
ひとつは、年度末や季節需要のように、ある程度予測できる繁忙期。
もうひとつは、システム障害、火災、事故、設備停止、市場環境の急変などによって、
突然やってくる繁忙期です。
どちらにも共通していることがあります。
それは、 いつもと違う状況になること です。
荷物が増える。
便数が増える。
人が増える。
初めて来るドライバーが増える。
確認作業が増える。
手作業が増える。
仮置きが増える。
すると現場では、普段は見えなかった問題が一気に表面化します。
しかし、ここに大きな矛盾があります。
👉 繁忙期に見えた課題は、繁忙期には解決できない
ということです。
■ 繁忙期は、考える余裕がない
繁忙期の現場は、とにかく忙しい。
- 荷物を止めない
- トラックを待たせない
- 作業を遅らせない
- クレームを出さない
- 事故を起こさない
現場管理者も作業者も、目の前の対応で精一杯です。
そんな時に、
「この動線を見直そう」
「仮置き場所を整理しよう」
「ドライバー待機場所を変えよう」
「床表示を追加しよう」
と考えるのは、現実的ではありません。
繁忙期の最中にできることは、
多くの場合、 なんとか回すこと です。
■ だから応急処置が増える
繁忙期には、現場で応急処置が増えます。
- とりあえずテープを貼る
- とりあえず張り紙をする
- とりあえず口頭で注意する
- とりあえず人を立たせて誘導する
- とりあえず空いている場所に仮置きする
もちろん、その場をしのぐためには必要な対応です。
しかし、問題はその後です。
繁忙期が終わっても、
その“とりあえず”が残り続けていないでしょうか。
- 仮のテープがそのまま
- 仮置き場所が常態化
- 張り紙が古くなって残る
- 口頭ルールが人によって変わる
こうなると、現場は少しずつ崩れていきます。
■ 繁忙期が終わると、課題は忘れられる
繁忙期の最中には、誰もが思います。
「ここは危ない」
「ここは詰まる」
「ここは分かりにくい」
「ここは次までに直したい」
しかし繁忙期が終わると、現場は落ち着きます。
すると今度は、👉 問題が見えにくくなる
忙しい時にはあれほど困っていたことが、
通常時には表面化しなくなります。
そして、こうなります。
「今は問題なく回っている」
「急いで直す必要はない」
「また忙しくなったら考えよう」
こうして、繁忙期に見えた課題は、
次の繁忙期まで先送りされてしまいます。
■ 閑散期には、予算を言い出しにくい
もうひとつ大きな問題があります。
それは、閑散期には、改善予算を言い出しにくいということです。
繁忙期には困っていた。
でも、忙しすぎて改善できなかった。
閑散期には時間がある。
でも、今は困っていないように見える。
このズレが、改善を止めてしまいます。
現場としては、
「次の繁忙期までに直したい」と思っていても、
経営側から見ると、
「今は落ち着いているのに、なぜ投資が必要なのか」となりやすい。
ここに、繁忙期対策の難しさがあります。
■ だから必要なのは「記録」です
繁忙期の課題を改善につなげるには、
まず必要なことがあります。
それは、👉 記録すること です。
繁忙期が終わってから思い出そうとしても、
細かい問題は忘れてしまいます。
だから繁忙期の最中に、すべてを解決する必要はありません。
その代わり、
- どこでトラックが詰まったか
- どこに仮置きが増えたか
- どこでドライバーが迷ったか
- どこで応援人員が止まったか
- どこでフォークリフトと人が交差したか
- どこで声掛けや注意が増えたか
- どこで管理者の手が取られたか
これを記録しておく。
この記録が、閑散期の改善計画になります。
■ 繁忙期は、現場の弱点が見える時期
ここが今回の重要な視点です。
繁忙期は、単に忙しい時期ではありません。
👉 現場の弱点が見える時期 です。
通常時は、人が慣れでカバーしています。
ベテランが気づいて動く。
管理者が声をかける。
いつもの人がいつもの判断で回す。
しかし繁忙期になると、
- 人が増える
- 初めての人が増える
- 動きが変わる
- 判断が増える
そのため、普段は隠れていた弱点が見えます。
つまり繁忙期は、
現場改善のための大切な“診断期間”でもあるのです。
■ 閑散期こそ、改善する時間
繁忙期に課題が見える。
でも繁忙期には解決できない。
だからこそ、
👉 閑散期に改善する
この考え方が必要です。
閑散期は、単に仕事量が落ち着く時期ではありません。
次の繁忙期に向けて、
- 動線を見直す
- 仮置き場所を整理する
- ドライバー誘導を整える
- 待機場所を明確にする
- バース表示を分かりやすくする
- 床や壁の表示を見直す
こうした改善を進める時期です。
■ 社員全体を巻き込む意味
この改善は、管理者だけで考えるより、
現場全体を巻き込んだ方が効果があります。
なぜなら、繁忙期の困りごとは、
実際に動いた人が一番よく知っているからです。
- 作業者が迷った場所
- ドライバーから質問された場所
- リフトマンが危ないと感じた場所
- 管理者が何度も確認された場所
こうした声を集めることで、本当に改善すべき場所が見えてきます。
そして、自分たちの意見が改善に反映されると、
現場の当事者意識も変わります。
👉 やらされる改善ではなく、自分たちの改善になる
ここが非常に大切です。
■ 内製化できる現場は、改善が進みやすい
繁忙期に見えた課題を、閑散期に改善する。
この流れを作る時に大切なのが、
👉 すぐに試せること です。
改善のたびに外注し、
見積を取り、
納期を待ち、
施工日を調整する。
これでは、改善のスピードが落ちます。
一方で、必要な表示を現場に合わせて内製化できれば、
- まず作ってみる
- 現場で試す
- 分かりにくければ直す
- 次の繁忙期までに整える
という流れが作れます。
つまり内製化は、単なるコスト削減ではなく、
👉 改善を止めないための仕組み になります。
■ 繁忙期対策は、繁忙期だけのためではない
閑散期に繁忙期対策をする。
そう聞くと、
「繁忙期のためだけに投資するのか」
と思われるかもしれません。
しかし、そうではありません。
繁忙期に強い現場は、突然の変化にも強くなります。
- システム障害で手作業が増えた時
- 火災後に一時動線が変わった時
- 事故後に一部エリアが使えない時
- 市場環境の変化で物量が急増した時
- 取引先都合で便数が変わった時
こうした時にも、
現場が迷わず動ける可能性が高くなります。
つまり、繁忙期対策は、
👉 変化に強い現場をつくるための投資
なのです。
■ 次回予告
では、閑散期に改善を進めるためには、
どのように社内を巻き込めばよいのでしょうか。
- 繁忙期の課題をどう共有するのか
- どの部署を巻き込むべきか
- どうすれば予算化しやすくなるのか
次回は、👉 「閑散期こそ、次の繁忙期対策を考える時間」
をテーマに掘り下げていきます。
■ 最後に
繁忙期の課題は、繁忙期には解決できません。
なぜなら、繁忙期の現場は、考える余裕がないからです。
だからこそ必要なのは、
👉 繁忙期に課題を記録し、閑散期に改善する仕組 です。
忙しい時に見えた問題を、落ち着いた時に直す。
その積み重ねが、
次の繁忙期に崩れない現場をつくります。
そしてそれは、
突然の変化にも強い現場づくりにつながります。
物流を止めないために必要なのは、
繁忙期だけ頑張ることではありません。
👉 繁忙期の経験を、次の改善に変えること
そこから、本当に強い現場づくりが始まるのではないでしょうか。

