
繁忙期になると、物流現場では人手が必要になります。
通常の人員だけでは、増えた荷物や便数に対応できない。
そこで、
- 他部署からの応援
- 別拠点からの応援
- 派遣スタッフ
- 短期アルバイト
- 協力会社の作業者
など、新しい人が現場に入ることがあります。
人が増えれば、作業は早く進む。
そう考えるのは自然なことです。
しかし実際には、
👉 人を増やしたのに、なぜか現場が遅くなる
ということがあります。
確認が増える。
説明が増える。
作業が止まる。
置き間違いが起きる。
管理者の負担が増える。
なぜでしょうか。
その理由の一つは、
👉 現場が“いつもの人”に合わせて作られているから
ではないでしょうか。
■ いつもの人は、表示を見なくても動ける
普段その現場で働いている人は、
現場のことをよく知っています。
「これはここに置く」
「この通路はリフトが来る」
「この時間はこのバースを使う」
「ここは一時的に置いても大丈夫」
「この荷物は次の便で出る」
こうしたことを、経験で覚えています。
中には、正式なルールとして書かれていないこともあります。
それでも、いつもの人同士なら分かる。
「あそこ」
「いつもの場所」
「前と同じ」
「こっちに寄せて」
「今日は向こう」
このような言葉でも、現場は動きます。
つまり、通常時の現場では、
👉 人の経験が、現場の不足を補っていることがあるのです。
■ 応援人員には「あそこ」が分からない
ところが、応援人員は違います。
「あそこに置いて」
と言われても、どこか分かりません。
「いつもの場所で」
と言われても、いつもの場所を知りません。
「この前と同じように」
と言われても、前回を知りません。
当然です。
初めて来た人に、現場の経験はありません。
しかし繁忙期には、説明する側にも余裕がありません。
その結果、
「とりあえず、ここで待って」
「分からなかったら聞いて」
「周りを見て動いて」
という対応が増えていきます。
ここから、迷いが始まります。
■ 分からない人は、確認する
応援人員が悪いわけではありません。
分からなければ、確認する。
これは正しい行動です。
「これはどこですか?」
「ここに置いていいですか?」
「この通路を使っていいですか?」
「次は何をすればいいですか?」
「この荷物で合っていますか?」
一人であれば、それほど大きな負担ではないかもしれません。
しかし、繁忙期に応援人員が何人も入ると、
同じような確認が現場のあちこちで発生します。
そのたびに、ベテランの手が止まる。
リフトマンの作業が止まる。
班長が呼ばれる。
管理者が説明する。
つまり、👉 応援人員が増えるほど、“教える仕事”も増えるのです。
■ 人を増やしても、管理者は増えない
ここは、非常に重要だと思います。
繁忙期には作業人員を増やすことがあります。
しかし、👉 管理者まで同じ割合で増えるとは限りません。
作業者が10人から15人になった。
しかし、班長は同じ。
管理者も同じ。
すると、一人の管理者が見る人数は増えます。
さらに、
- 初めての人への説明
- 作業の確認
- 間違いの修正
- 配置の変更
- 安全確認
まで増える。
つまり、人を増やしたことで、
👉 管理する側の負担が大きくなる ことがあります。
これでは、せっかく人を増やしても、
現場全体のスピードが上がらない可能性があります。
■ ミスは「知らないこと」から起きる
応援人員が増えた時、
現場ではミスが増えることがあります。
- 荷物を違う場所に置く
- 通ってはいけない場所を通る
- 仮置き禁止場所に置く
- 作業順序を間違える
- 違うバースへ荷物を運ぶ
こうしたことが起きると、
「ちゃんと説明したのに」
「なぜ確認しないのか」
「注意が足りない」
という話になりがちです。
しかし、本当にそうでしょうか。
初めて来た人が間違えるのであれば、
👉 知らないと間違える現場になっていないか
を見る必要があります。
いつもの人は間違えない。
しかし、初めての人は間違える。
それは人の能力ではなく、
👉 経験に依存した現場 である可能性があります。
■ 繁忙期ほど、長い説明は伝わらない
では、教育を増やせばよいのでしょうか。
もちろん、事前教育は必要です。
しかし繁忙期の現場では、
教育だけに頼ることにも限界があります。
忙しい。
音が大きい。
人が動いている。
リフトが走っている。
荷物が増えている。
そんな状況で、
「この場合はこうしてください」
「ただし、この荷物は別です」
「午後からは運用が変わります」
と説明しても、すべてを覚えるのは難しいでしょう。
まして、初日に覚えたことを、
その場で正確に判断するのは簡単ではありません。
だからこそ、
👉 覚えてもらうだけではなく、現場で分かる状態にする必要があります。
■ 応援人員が見る場所はどこか
初めて現場に入った人は、何を見て動くのでしょうか。
周りの人。
荷物。
床。
壁。
表示。
つまり、現場そのものです。
だから、
- どこを歩くのか
- どこに置くのか
- どこに入ってはいけないのか
- どこで止まるのか
- 次にどこへ向かうのか
これが見れば分かるようになっていれば、
応援人員は動きやすくなります。
逆に、
床には何もない。
置き場が曖昧。
表示は古い。
ルールは口頭。
この状態では、人は周りの人を見て動くしかありません。
👉 “人を見て覚える現場”は、繁忙期に弱い のです。
■ 応援人員に合わせると、通常時も楽になる
ここで面白いことがあります。
応援人員や新人でも分かる現場を作ると、
普段働いている人も動きやすくなります。
置き場が分かる。
動線が分かる。
禁止エリアが分かる。
作業の区切りが分かる。
確認が減ります。
声掛けが減ります。
説明も減ります。
つまり、
👉 初めての人に分かりやすい現場は、いつもの人にも働きやすい のです。
応援人員対策は、繁忙期だけの対策ではありません。
普段の現場を見直すきっかけにもなります。
■ 「誰でも働ける現場」が人手不足にも強い
これからの物流現場では、
人の入れ替わりや応援人員の活用が増える可能性があります。
その時、
「経験者しか動けない」
「ベテランがいないと回らない」
「新人は数週間教えないと使えない」
という現場では、人を増やしてもすぐには戦力になりません。
反対に、初めて来た人でも、
- 歩く場所が分かる
- 置く場所が分かる
- 危険な場所が分かる
- 次の行動が分かる
そんな現場であれば、立ち上がりは早くなります。
👉 人を増やせる会社より、増えた人が動ける現場を持つ会社が強い
私は、そう思います。
■ 次回予告
応援人員が増える繁忙期。
現場では、もう一つ大きな問題があります。
それは、
👉 忙しい時ほど、人は表示を読まなくなること です。
「注意」
「安全第一」
「必ず確認」
「ルールを守る」
表示はたくさんある。
しかし、本当に行動につながっているのでしょうか。
次回は、
👉 「繁忙期の安全対策は、注意喚起だけでは足りない」
をテーマに掘り下げていきます。
■ 最後に
応援人員が増えると、
ミスが増える。
その原因を、
「慣れていないから」
「教育が足りないから」
だけで終わらせてはいけません。
本当に見るべきなのは、
👉 いつもの人にしか分からない現場になっていないか です。
「あそこ」
「いつもの場所」
「前と同じ」
これで動けるのは、経験のある人だけです。
繁忙期に強い現場とは、
👉 初めて来た人でも、見れば次の行動が分かる現場
ではないでしょうか。
人を増やすだけではなく、
増えた人が迷わず動ける環境をつくる。
そこに、繁忙期に崩れない現場づくりの大きなヒントがあると思います。
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