これまで4回にわたり、物流現場の変化について考えてきました。

第1回では、物流現場そのものが20年前とは大きく変わっていること。

第2回では、フォークリフト事故は今も続いており、事故の形も変化しているのではないかということ。

第3回では、リチウムイオン電池、自動搬送設備、AGV、サイバー攻撃など、

20年前にはあまり意識されていなかった新しいリスクが増えていること。

第4回では、人手不足により、一人作業や慣れないドライバー、応援作業者が現場に入ることによるリスクが高まっていること。

ここまで見てくると、一つの問いが浮かびます。

物流現場は変わった。

では、安全対策の考え方は変わっているのでしょうか。

従来の安全対策は今も必要

まず誤解してはいけないのは、従来の安全対策が不要になったわけではないということです。

フォークリフト教育。

KYT。

安全パトロール。

注意喚起。

保護具。

看板。

床のライン。

これらは今も必要です。

現場で働く人の安全意識を高めることは、これからも大切です。

しかし問題は、それだけで今の現場を守りきれるのか、ということです。

現場は20年前と同じではない

20年前と比べて、物流現場は大きく変わりました。

ECの拡大により、荷物の種類は増えました。

在庫削減により、入出荷の頻度は増えました。

短納期化により、現場は急がされる場面が増えました。

人手不足により、慣れていない人が現場に入る場面も増えました。

自動搬送設備やAGV、リチウムイオン電池など、昔はあまりなかったリスクも増えています。

つまり、今の物流現場は、昔と同じように見えて、実際にはまったく違う環境になっています。

これまでの予算で足りるのか

安全対策の予算は、多くの企業で毎年ある程度決まっていると思います。

安全教育費。

安全用品費。

表示物。

保護具。

点検費用。

もちろん、これらは必要です。

しかし、現場のリスクそのものが変わっているなら、従来の安全対策予算だけでは足りないのではないでしょうか。

例えば、20年前にはリチウムイオン電池火災への対策は、今ほど重要ではありませんでした。

20年前には、AGVや自動搬送設備と人が同じ空間で動く現場は、今ほど一般的ではありませんでした。

20年前には、サイバー攻撃で物流システムが停止し、現場が混乱するというリスクも、

今ほど現実的ではありませんでした。

それなのに、安全対策の考え方だけが昔のままでよいのでしょうか。

「安全予算」と「変化対応予算」は分けて考える

これからは、安全対策予算を一つにまとめて考えるのではなく、二つに分けて考える必要があるのではないでしょうか。

一つは、従来の安全予算です。

これは、これまで存在していた危険への対策です。

・フォークリフト教育
・保護具
・安全パトロール
・注意喚起
・既存表示の更新
・基本的な安全用品

もう一つは、変化対応予算です。

これは、現場の変化によって新しく生まれたリスクへの対策です。

・リチウムイオン電池への対応
・自動搬送設備やAGVへの対応
・一人作業や非定常作業への対応
・高床バースでの転落対策
・慣れないドライバーへのルール伝達
・サイバー攻撃やシステム停止時の現場運用
・荷量変動による仮置き、動線混乱への対応

この二つは、同じ安全対策でも性質が違います。

従来の安全予算は、今ある危険を管理するためのもの。

変化対応予算は、現場の変化によって新しく生まれた危険に備えるためのものです。

「注意する」だけでは追いつかない

今の物流現場では、注意喚起だけでは追いつかない場面が増えています。

なぜなら、現場に入る人が変わるからです。

荷物が変わるからです。

設備が変わるからです。

作業のスピードが変わるからです。

昨日と同じように見える現場でも、今日の荷量、今日の人員、今日のドライバー、今日の出荷条件は違います。

その中で、安全を人の注意力だけに頼るのは限界があります。

現場で見れば分かる状態にする

これから必要になるのは、ルールを増やすことだけではありません。

大切なのは、現場で見れば分かる状態にすることです。

どこを歩くのか。

どこで待つのか。

どこに置いてよいのか。

どこに近づいてはいけないのか。

どの設備が動く可能性があるのか。

異常時にどこへ逃げるのか。

これらが、ベテランだけでなく、新人、応援者、外部ドライバーにも伝わる状態になっているか。

そこが、これからの安全対策では重要になります。

経営課題として考える時期

安全対策は、現場だけの問題ではありません。

事故が起きれば、人が傷つきます。

作業が止まります。

出荷が遅れます。

信用を失います。

場合によっては、刑事責任や民事責任を問われることもあります。

つまり安全対策は、単なる現場費用ではなく、事業継続のための投資でもあります。

物流現場が変わった今、安全対策の予算も、これまでの延長ではなく、

経営課題として見直す時期に来ているのではないでしょうか。

まとめ

物流現場は20年前と比べて大きく変わりました

荷物も変わりました。

設備も変わりました。

働く人も変わりました。

求められるスピードも変わりました。

それならば、安全対策も変わらなければなりません。

従来の安全対策は、これからも必要です。

しかしそれだけでは、今の現場を守りきれないかもしれません。

これからは、

「これまでの安全予算」と「現場の変化に対応する予算」を分けて考える。

そんな視点が必要になっているのではないでしょうか。

事故が起きてから対策するのではなく、現場が変わったことに気づいた時点で、対策も変えていく。

それが、これからの物流現場に求められる安全の考え方だと思います。

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