わかる化サインの検討が始まるきっかけは、企業によってさまざまです。

  • 経営陣が安全対策に関心を持ち、安全管理部に調査検討を指示した
  • 安全管理部が、事故や是正指導をきっかけに動き出した
  • 現場スタッフが危機感を持ち、安全管理部に相談した

多くの場合、その背景には過去の重大事故や、減らない接触トラブル
(リフトと人、リフトと壁・シャッターなど)が存在します。

監督官庁からの指導をきっかけに、検討が始まるケースもあります。

■ 検討が進む企業には「3者の合意」が必要になる

検討が本格化すると、必ず関わるのが次の3者です。

  • 経営陣(投資判断)
  • 安全管理部門(制度・責任)
  • 現場スタッフ(運用・実行)

この3者の合意がなければ、どれほど正しい対策でも前に進みません。

そして最初に行われるのが、コスト比較 です。

  • 外注した場合の導入コスト
  • 現状(塗装・テープ・教育)との比較

この段階で
「高すぎるので今回は見送る」という判断になる企業もあります。

一方で、「これからは安全に、コストをかけるべきだ」

という考えが共有され、検討が前向きに進むケースもあります。

■ それでも、多くの企業は「テスト導入」で止まる

3者の合意がある程度そろい、
「まずはテスト導入してみよう」という判断に至る。

ここまでは、決して珍しい話ではありません。

しかし現実には、
テスト導入を行ったまま、次の判断に進まないケースが非常に多い

  • 「6か月ほど様子を見ましょう」
  • 「年度をまたいで検討しましょう」
  • 「他の案件に予算を使いました」
  • 「担当者が変わりました」

こうして、わかる化の話は次第に表に出なくなります。

■ テスト導入が「お試し」ではない企業の実態

実際には、テスト導入に進む企業ほど、事前に多くの準備をしています。

① 使用目的の共有

テープや塗装と、わかる化サインは目的が異なります。

わかる化サインの目的は、

「誰が見ても、ルールが誤解なく伝わること」

この前提を、

  • 現場スタッフ
  • 安全管理部
  • 関係部署

に共有したうえで、検討が進められます。

② 「どこに・何を」表示すべきかの議論

検討が進む企業では、

  • どこで判断が迷っているのか
  • どこで事故が起きやすいのか
  • どこに誤解が生まれているのか

といった点を整理し、
わかる化サインが必要な場所 を洗い出します。

③ 外注した場合の金額をあえて提示する

さらに、

  • 全体を外注した場合の費用
  • テスト施工の位置づけ

が提示されます。

これにより、内製化を検討する意味や背景が
関係者全員に共有されます。

④ 守秘義務契約(NDA)の締結

検討が本格化すると、
守秘義務契約 が結ばれるケースもあります。

これにより、

  • 総務部
  • 管理部門

にも情報が共有され、検討が個人レベルから
組織レベルの案件
へと移行します。

⑤ テスト施工でも見積もりが作られる

テスト導入であっても、見積もりは作成致します。

つまり、テスト導入はすでに、経営判断の入口 に立っている状態です。

■ それでもテスト導入が止まってしまう理由

ここで、もう一つ
非常に多くの現場で見られる問題があります。

「誰が作業を行うのか」が決まっていない という点です。

わかる化サインは、

  • 貼って終わりではなく
  • 運用し、修正し、貼り替える

ことが前提になります。

しかし、

  • 現場がやるのか
  • 安全管理部が担うのか
  • 外注とどう役割分担するのか

この整理がされないままテスト導入に進むと、
わかる化サインは「誰の仕事でもない状態」 になります。

その結果、

  • 判断時期が決まらない
  • 判断基準が共有されない
  • 作業の責任も曖昧になる

こうしてテスト導入は、判断ではなく 保留 に変わってしまいます。

■ 第7回まとめ

・テスト導入は、すでに本格検討段階

・経営・安全・現場の3者合意が必要

・テストは様子見ではなく、判断のための工程

・判断時期・判断基準・作業主体が決まらないと止まる