
厚生労働省が公表した令和6年の労働災害発生状況によると、
休業4日以上の死傷者数は135,718人となり、4年連続で増加しています。
また、陸上貨物運送事業においても、休業4日以上の死傷者数は16,292人となり、
前年より増加しています。
死亡者数は過去最少となっている一方で、休業を伴う労働災害は増え続けている。
この事実は、物流倉庫や配送に関わる企業にとって、決して軽く見ることのできない状況だと思います。
そのような中で、今後気になるのが、石油不足やナフサ不足による梱包資材への影響です。
ストレッチフィルム、PPバンド、梱包テープ、緩衝材、樹脂製品など、
物流現場では多くの消耗品が使われています。
もし、これらの価格が高騰したり、品薄になったりすれば、物流倉庫の現場では、
これまでとは違う判断が求められる場面が増えるかもしれません。
資材の高騰は、購買部門だけの問題ではない
梱包資材の価格が上がれば、企業としては当然、コストを抑える必要があります。
フィルムの使用量を見直す。
再利用できる資材を活用する。
代替資材を検討する。
過剰な梱包を減らす。
資材ロスを少なくする。
これらは、経営判断としては自然な流れです。
ただし、その判断が現場に降りてきたとき、作業員の方には
これまで以上に細かな判断が求められる可能性があります。
どこまでフィルムを巻けばよいのか。
どの商品はしっかり固定すべきなのか。
代替資材を使っても問題ないのか。
再利用してよい資材と、使ってはいけない資材の違いは何か。
荷姿の安定性は本当に保てているのか。
一つひとつは小さなことかもしれません。
しかし、現場で判断することが増えれば、その分だけ確認や迷いも増えていきます。
「節約」と「安全」の間で、現場が迷う場面が増えるかもしれない
梱包資材は、単なる消耗品ではありません。
商品を守り、荷崩れを防ぎ、出荷品質を維持するための重要な資材です。
そのため、単純に使用量を減らせばよいというものではありません。
もちろん、過剰な梱包を見直すことは大切です。
しかし一方で、必要な梱包まで減ってしまえば、荷崩れ、破損、積み直し、
再梱包といった手戻りが発生する可能性があります。
そして、物流現場で気をつけたいのは、この「手戻り作業」です。
通常の流れで作業しているときよりも、予定外の積み替え、巻き直し、仮置き、
確認作業が増えたときの方が、現場は乱れやすくなります。
通路に一時的に荷物が置かれる。
フォークリフトの動線が変わる。
出荷待ちと確認待ちの商品が混在する。
作業員同士の声かけが増える。
ドライバーとの確認が増える。
こうした変化が重なったとき、ヒヤリハットにつながる場面が増える可能性もあります。
物量の不安定化も、現場負担を増やす要因になる
今年に入り、物流企業を取り巻く環境はさらに不安定になっています。
資材の調達状況、荷主側の出荷計画、燃料費、納期対応、人手不足。
どれか一つだけでも現場には負担になりますが、これらが重なると、
日々の作業計画そのものが組みにくくなります。
ある日は物量が少ない。
別の日には一気に出荷が集中する。
予定していた資材が入らない。
代替資材で対応する。
急な出荷変更が入る。
こうなると、現場では「いつも通り」の作業がしにくくなります。
物流倉庫では、作業の流れが安定していることが、安全にもつながっています。
反対に、物量や資材、置き場、作業手順が少しずつ変わると、
現場の確認事項は増えていきます。
労働災害がすでに増加傾向にある中で、このような新たな負担要因が加わることは、
管理者にとって見落とせない問題ではないでしょうか。
これまでと同じ対策だけで大丈夫なのか
今回の問題で大切なのは、
「梱包資材が高くなるから事故が増える」と決めつけることではありません。
そうではなく、すでに労働災害が増えている状況の中で、
現場に新たな判断や負担が加わる可能性があるということです。
これまでと同じ安全対策を続けていても、労働災害は増加傾向にあります。
その上で、資材高騰、品薄、物量の不安定化、再梱包、仮置き、
代替資材への対応といった要素が増えれば、現場の負担はさらに大きくなるかもしれません。
だからこそ、今必要なのは、大きな設備投資や特別な対策だけではないと思います。
まずは、現場で何が変わり始めているのかを確認すること。
どこで判断が増えているのかを把握すること。
作業員の方が、どの場面で迷っているのかを見逃さないこと。
このような小さな確認が、
これからの安全対策では大切になってくるのではないでしょうか。
現場で確認しておきたいこと
梱包資材の高騰や品薄が続く場合、
物流倉庫では次のような点を一度確認しておきたいところです。
・フィルムや梱包材の使用基準が、作業員ごとにバラついていないか。
・代替資材を使う場合、その判断基準が現場に伝わっているか。
・再利用してよい資材と、使用してはいけない資材が混在していないか。
・巻き直しや再梱包の作業場所が決まっているか。
・確認待ち、出荷待ち、保留品などの置き場が曖昧になっていないか。
・仮置きが通路やフォークリフト動線にはみ出していないか。
・ドライバーとの受け渡し時に、荷姿や積み込みに関する確認が増えていないか。
これらは、どれも大きな問題に見えないかもしれません。
しかし、物流現場では、小さな迷いや手戻りが重なることで、
事故につながることがあります。
まとめ
梱包資材の高騰や品薄は、単なるコスト問題ではありません。
物流倉庫の現場にとっては、作業手順、荷姿、置き場、確認作業、
人間関係にも影響する可能性があります。
もちろん、すべての現場で問題が起きるわけではありません。
また、資材高騰が直接、労働災害を増やすと断定することもできません。
しかし、厚生労働省の発表では、休業4日以上の死傷者数は4年連続で増加しています。
陸上貨物運送事業でも、死傷者数は前年より増えています。
その状況の中で、現場に新たな判断やストレスが加わる可能性があるなら、
物流企業は早めに現場の変化を見ておく必要があるのではないでしょうか。
これまでと同じことをしていても、事故は増えている。
そこに新たなリスク要因が加わろうとしている。
だからこそ、今こそ現場の小さな変化を見落とさないことが大切だと思います。

