前回の記事では、大企業が物流を経営課題として捉え始めていることを書きました。

川崎重工が調達本部の中に「物流部」を新設したニュースは、その象徴的な出来事です。

物流は単なる輸送ではなく、企業を止めないためのインフラになりつつあります。

しかし、ここで多くの企業が直面する問題があります。

それは物流を設計しても、現場がその通りに動かないという現象です。

■ 物流はかなり緻密に設計されている

物流センターや工場のレイアウトは、実はかなり考え抜かれて設計されています。

フォークリフトの動線
歩行者の通路
荷物の仮置き場所
トラックの導線
入出荷のレイアウト

これらは効率と安全の両方を考えて作られています。

図面だけを見ると、非常によくできています。

ところが現場では、次のようなことが起きます。

・歩行帯を歩かない
・仮置きが増える
・通路に荷物がはみ出す
・フォークリフトが交差する

最初は小さなズレです。

しかし、そのズレが積み重なると本来の設計とは違う現場になっていきます。

■ 人は「見えないルール」を守れない

なぜこういうことが起きるのでしょうか。

理由はとてもシンプルです。

人は見えないルールを守るのが苦手だからです。

例えば新人が現場に来たとき。

「ここはフォークリフト通路です」
「ここは仮置き禁止です」
「ここは歩行帯です」

と説明されても、実際の現場では分かりにくいことがあります。

結果としてどうなるか。

ベテランが注意することで現場が維持されるようになります。

つまり人で守る現場になってしまうのです。

■ 人で守る現場は長く続かない

人に頼る現場には、共通する特徴があります。

新人が迷う
注意が増える
人間関係が悪くなる
事故が起きる

そしてもう一つの問題があります。

人手不足です。

ベテランが減り、新人が増え、外国人スタッフも増えています。

つまり「人が理解して守る」という仕組みは、だんだん難しくなってきています。

■ 見える化と「わかる化」は違う

ここで重要な考え方があります。

それが見える化と、わかる化の違いです。

見える化とは情報が見える状態です。

例えば注意ポスター、ルール掲示、危険表示これらはすべて見える化です。

しかし現場では、こういう声を聞くことがあります。

「見えているけど、どう動けばいいのか分からない」

ここが問題です。

一方、わかる化は違います。

見ただけで行動が決まる状態です。

例えば、歩行帯、フォークリフト通路、仮置き禁止エリア

床を見るだけで

どこを歩く、どこを通る、どこに置かないが自然に理解できる環境です。

つまり、考えなくても正しい行動ができる状態です。

■ 物流改革は現場で完成する

企業は今、物流を経営課題として見直しています。

しかし物流改革は会議室だけでは完成しません。

最後に完成する場所は現場です。

そのとき重要になる考え方があります。

見える化ではなく、わかる化です。