
新人が辞める理由を聞くと、
「きつい」「忙しい」「自信がない」
そんな言葉が並びます。
でも本音はもっと別のところにあります。
仕事そのものより――
“人間関係の不一致”がつらい。
新人は毎日こんな気持ちで現場に立っています。
■「自分ばかり怒られてる?」という錯覚
新人は、周りの空気を敏感に拾います。
・あの先輩は優しい
・あの人は機嫌が読めない
・言い方がきつい人がいる
・同じミスでも怒られる人と怒られない人がいる
そんな中で、
ふとした瞬間にこう感じます。
「なんで私だけ怒られてるんだろう…?」
もちろん、誰も“新人を狙って怒っている”わけではありません。
でも新人は、その区別ができない。
怒られた理由が見えないと、
“自分の存在そのもの”が責められているように感じてしまうのです。
■「言われた通りにしただけなのに…」
新人のあるあるです。
A先輩:「ここに置いといて」
→ 言われた通りに置く
B先輩:「誰これ置いたん!違うで!」
新人は心の中で叫びます。
「さっき教えてくれた先輩の通りにしたのに…!」
「なんで怒られるの…?」
この“正解の不一致”が
新人のメンタルを削り取ります。
■「聞きたいことが聞けない職場」のしんどさ
新人は本当は聞きたいのです。
「これはどっちのルールですか?」
「次は何をすればいいですか?」
「この場合どうすればいいですか?」
でも、現場の空気はこうなりがちです。
・みんなバタバタしている
・声をかけるタイミングがわからない
・逆に怒られそうに感じる
・“自分の仕事は自分でやれ”の雰囲気
新人は徐々にこう考えます。
「聞いて迷惑かけたら悪いし…」
「間違えても怒られるし…」
「どうしたらいいのかわからなくなってきた…」
聞けなくなると、
ミスが増え、怒られ、さらに聞けなくなる。
負のループです。
■「次は何をすれば?」が誰にも聞けない瞬間
新人は、
仕事の“次の一手”が分からない時が一番つらい。
・主任が不在
・先輩は荷主対応中
・他のスタッフはピリピリしている
・誰にも相談できない
気配を読むだけで疲れ切ってしまう。
これが「辞めたい」に直結します。
■では、ベテラン側の“心の声”はどうなのか?
新人からは見えませんが、
先輩にもこんな本音があります。
「関わると自分の仕事が終わらない」
「今教える余裕がない」
「手伝ってると課長に怒られる」
「“教え方が悪い”と言われるのも嫌」
新人に冷たいわけではない。
余裕がないだけ。
そしてこう自分を守り始めます。
「必要最低限だけ伝えよう」
「間違っても、自分の責任にされたら困る」
「トラブルになるぐらいなら距離を置こう」
新人は“冷たくされた”と感じる。
先輩は“守りの姿勢”になっている。
悪者はいないのに、
ギャップだけが広がっていく。
■新人と先輩の間にあるのは“悪意”ではなく、ただのすれ違い
誰かが悪いわけではない。
新人は「正しい行動を知りたいだけ」。
先輩は「自分の仕事を守りたいだけ」。
管理者は「現場を回すことで精一杯」。
悪意は一つもないのに、
すれ違いだけが積み重なり、
新人は静かに心をすり減らしていきます。
■結論:新人は“人間関係の隙間”で辞めていく
新人が辞める理由の多くは、
仕事の内容ではありません。
・気持ちを聞けない
・助けを求められない
・正解が人によって違う
・不機嫌の理由がわからない
・自分だけ怒られてる気がする
この“小さなひずみ”が積み重なると、
新人は「自分は向いていない」と感じてしまう。
本当は能力の問題なんかじゃない。
ただ、人間関係の“揺れ幅”が大きいだけ。


