
床のテープが剥がれる。
ペンキがすぐに黒ずむ。
フォークリフトが巻き込んで端がめくれる。
そんな日々が続くと、現場には必ずこういう指示が飛んできます。
「もっと良いテープを探してこい」
改善ではなく、「テープ探し」が始まる瞬間です。
■ テープ探しは、現場の“沼”だった
多くの現場で見た光景があります。
担当者がカタログを見て、メーカーを何社も呼んで、床にテストを貼る。
「これが強いらしい」
「耐久性が高いらしい」
「フォークリフト対応らしい」
そう言われれば、また試す。
でも結果は…
・剥がれる
・汚れる
・黒ずむ
・巻き込む
・消える
どれも同じ。。。メーカーが替わっても、根本は変わらない。
そして、いつの間にか現場はこうなります。
「良いテープを探すこと」=「改善」だと思い込む。
これが“目的のすり替わり”。
■ 上司は「探せ」、現場は「無理です」と心で叫ぶ
良いテープを探すように言う上司は、決して悪気があるわけではありません。
事故を減らしたい。
ルールを守らせたい。
現場をよくしたい。
思いは間違っていない。
でも、それを“テープの品質”に期待してしまう。
現場担当者の本音はこうです。
・「もう全部試した」
・「フォークが増えたら無理なんです」
・「貼り替えるたびに床が汚れる」
・「貼り替え作業をスタッフに頼むのも気が引ける」
現場と管理者の間で、小さくて深い“溝”が生まれていく。
■ テープ探しゲームは、現場のエネルギーを奪う
テープ探しには3つの副作用があります。
① 「うちは改善している」という錯覚が生まれる
実際は、
テープを貼り替えているだけで改善にはなっていない。
② 現場の「やらされ感」が強まる
毎週のように剥がれて、毎週貼り替える。
「やっても意味ない」と思うのは当然。
③ 本当に必要な改善が後回しになる
事故の原因は“見えにくさ”なのに、
手段が“テープ強化”に固定されてしまう。
こうして現場は、
改善の方向を見失っていきました。
■ 喉から手が出るほど欲しかったのは “強いテープ”ではなかった
ここが最も重要なポイントです。
現場はずっと「強いテープ」を探していました。
でも本当に求めていたのは、そんなものではありません。
本当に必要だったのは…
・新人でも迷わない動線
・フォークと歩行の自然な分離
・荷役のバラつきを抑えるライン
・間違いようのない“視覚情報”
・汚れず、消えず、続くルール表示
つまり、
“守りやすいルール”そのものが欲しかった。
テープはその手段だったはずなのに、
いつしか目的にすり替わってしまったのです。
■ だからこそ、どれだけテープを替えても永遠に解決しなかった
強いテープが見つかっても、
現場の問題は何一つ解決しませんでした。
・人は記憶で動く
・ルールは忘れる
・忙しいと判断が曖昧になる
・床は汚れる
・劣化すれば表示は読めない
・結局、事故やミスが起こる
テープを強化しても、現場の行動は変わらなかった。
手段だけが強化され、目的は置き去りにされたままだった。
■まとめ
テープ探しゲームは、
現場をよくしたいという“まっすぐな思い”から始まったものです。
でもその結果、
20年のあいだ多くの現場が同じ迷路を彷徨い続けました。
そしてようやく気づくのです。
「現場が求めているのは“強いテープ”ではない。」
「誰もが自然にルールを守れる“仕組み”だ。」

