
第5回では、新人が辞める本当の理由として
「指示の揺れ」「空気の揺れ」「人の気分の揺れ」
この “揺れ幅” が新人のストレスになるという話をしました。
では、この揺れ幅が小さくなると何が起きるのか?
結論から言うと――
新人が楽になる。
ベテランが楽になる。
管理者が楽になる。
そして結果として、
現場が静かに整っていく。
今日は、そのメカニズムを深掘りします。
■ 揺れ幅が小さくなると、新人は「安心して動ける」
新人は “正解が揺れる” ことに最もストレスを感じます。
・昨日と今日で言うことが違う
・AさんとBさんで答えが違う
・聞きたいけど、空気が怖くて聞けない
そんな環境だと、新人はずっと身構えています。
でも、揺れ幅が小さくなるとこう変わります。
「これが正しい」
「ここに置けばいい」
「ここで止まればいい」
新人は “迷う時間” と “怒られる不安” が減る。
すると、動きが自然と軽くなります。
迷わない新人は、辞めません。
■ ベテランも“イライラしなくなる”
ベテランが新人に冷たく見える時、
本当はイライラしたくてしているわけではありません。
仕事を止めたくない。
自分の責任を増やしたくない。
説明している余裕がない。
この “余裕のなさ” が原因です。
でも揺れ幅が小さくなると――
・新人が勝手に正しい動きができる
・説明回数が減る
・ミスによるリカバリーが減る
・「なんでや!」が減る
・自分の仕事に集中できる
つまり、
ベテランから余裕が戻ってくる。
余裕が生まれると、
自然に新人へ柔らかく接するようになる。
「お、一丁前になってきたやん」
「あ、それでええねん」
そんな言葉が増えると、
新人はぐっと働きやすくなる。
■ 管理者の「叱る仕事」が減っていく
管理者が最も疲弊するのは、
“同じ注意を何度もしなければならないこと”。
これが揺れ幅の大きい現場で起きています。
揺れ幅が小さくなると…
・注意回数が減る
・毎朝同じ説明をしなくて済む
・人間関係のトラブルが減る
・小言のストックが消える
・指導と改善の質が上がる
つまり、
管理者が “叱る仕事” から解放され、
“未来の仕事”に時間を回せるようになる。
ここが実は一番のポイントです。
管理者が余裕を持つと、
現場の空気は一気に変わります。
■ 揺れ幅が小さい職場は、“居心地がいい”
揺れ幅が小さいと…
・声のトーンが柔らかくなる
・表情が明るくなる
・怒鳴り声が減る
・新人へのあたりが減る
・先輩同士の会話が増える
・パートさんの機嫌が安定する
職場に流れる空気が変わる。
空気が変わると、
新人定着率が劇的に上がり、
そして、
外部の人がその変化に気づき始めます。
■ 協力会社・ドライバー・荷主が“現場の空気”を評価する
物流の世界では、
外部の人の口コミが企業のブランドを左右します。
揺れ幅が小さい“穏やかな職場”は、
外から見るとこう映ります。
「あのセンターは雰囲気がいい」
「スタッフの動きが丁寧で安心する」
「荷物を任せても不安がない」
「ドライバーへの対応も穏やか」
これはもう、
完全な企業価値・ブランド力です。
空気の良さは、
売上や契約にも直結する。
そしてその起点は、
ほんの少しの“揺れ幅改善”なのです。
■ 結論:環境が整うと、人間関係が整う
人を変えるのは難しい。
でも、環境を整えると人は自然に変わる。
人間関係の揺れ幅を小さくすることで、
・新人が続く
・ベテランが優しくなる
・管理者が未来を考えられる
・外部からの評価が上がる
・企業価値が高まる
現場は静かに、確実に良くなっていきます。
そしてその「揺れ幅を小さくする仕組み」が
次回につながるキーワードになります。



