厚生労働省の統計によると、2008年以降、休業4日以上の労働災害は減少傾向から一転し、2022年までに再び増加に転じています。(105,718人から132,355人)

特にその傾向が顕著なのが、私たちが関わる物流倉庫業界です。
なぜ“災害ゼロ”が叫ばれる中で、現実には事故が増えているのでしょうか?
今回はその背景を、物流現場の視点から読み解きます。
◆ 理由①:作業の“多様化”と“複雑化”
かつてはシンプルだった入出荷作業も、現在では
- 多品種少量化
- 当日出荷/即日納品
- ネット通販の台頭による出荷量の増加
など、スピードと精度の両立が求められるようになりました。
その結果、作業者の負担は増え、**「焦り」「確認不足」「動線の混乱」**といった要因が事故につながっています。
◆ 理由②:人材の“流動化”と“教育の限界”
外国人労働者、シニア層、未経験者、派遣社員。
人手不足を補うために、さまざまな立場の人材が現場に入るようになりました。
しかし、現場では・・・・・
- 言葉が通じない
- 経験が浅く危険認識がない
- ベテランでも「暗黙のルール」が伝わらない
といった課題が山積みです。
結果として、「知らずにミスをする」状況が生まれやすくなっています。
◆ 理由③:注意喚起の“限界”と“形骸化”
注意喚起やKY(危険予知)活動は行っていても、
- トラテープが擦り切れて見えない
- サインが小さく、文字だけで伝わらない
- 「一度説明したから大丈夫」と思い込みがち
など、“伝わっていない”“定着していない”注意喚起が多く見られます。
本来、ルールとは誰にでも分かりやすく、自然に守れるものでなければなりません。
そこに、「わかる化サイン」などの“仕組み”による対策が必要になっているのです。
◆ 理由④:ヒヤリハットの蓄積が事故に繋がっている
「たまたま事故にならなかっただけ」の小さなヒヤリ。
これらが日常的に見過ごされる現場では、いつか重大災害が起こります。
特に:
- 歩行帯の不整備
- 台車・カゴ車・リフトの交差点での接触未遂
- 荷物置き場のあいまいな運用
など、“動線のあいまいさ”が積み重なって災害になるのです。
◆ まとめ:「仕組み」で変える時代へ
労働災害が再び増えつつある今、私たちが問われているのは
「本当に現場で事故を防げる環境が整っているか?」ということ。
教育・注意だけに頼るのではなく、
“見ればわかる”表示で、誰もが正しく行動できる仕組みを作る。
これが、これからの物流現場に必要な本質的対策ではないでしょうか??
💬 最後に
「うちはルールがあるから大丈夫」
そう思っていませんか?
事故は、ルールが“ある”現場ではなく、ルールが“伝わらない”現場で起こります。
休業4日以上の労災が増えている今だからこそ、
“わかる化”を通じて、現場の安全を根本から見直す時です。
