■ 現場に根強く残る“叱責文化”物流倉庫や荷役現場でよく見られるのが、ルール違反や危険行動に対して管理者が強く叱責する場面です。
「守らないから事故が起きる。だから厳しく言うしかない」という考え方は長く受け継がれてきました。
確かに叱責直後はスタッフの動きが引き締まり、一時的には事故が減るように見えます。
しかし時間が経つと、同じ違反や不安全行動が繰り返され、結局事故は減らないまま。
この“堂々巡り”が続いている現場は少なくありません。
■ 叱責がもたらす副作用
叱責は一時的な効果しかなく、長期的にはむしろ悪影響を及ぼします。
・萎縮:「怒られないように」と行動が慎重になりすぎ、作業効率が落ちる
・反発:「自分だけ責められている」と感じ、不公平感が強まる
・不信感:「どうせ言っても無駄」と、現場と管理者の間に壁ができる
この悪循環の結果、叱責の数が増えれば増えるほど雰囲気はギスギスし、逆にヒヤリ・事故が増えるという矛盾が生じます。
■ 人は叱られても定着しない
叱責中心の職場では、「嫌な思いをしてまで働く必要はない」と考え、スタッフは辞めてしまいます。
ただ、この“嫌な思い”は漠然とした感情ではなく、もっと具体的な“心の声”として現れています。
例えば30歳以下のスタッフなら、叱られながらこんなことを考えています。
・「そんな話、初めて聞いたわ…」
・「このルール、誰が作ったの?今の現場をわかってるのかな?」
・「今日は特別機嫌悪いな…」
・「私には言いやすいのかな?あの人にも注意してよ」
・「帰るの遅くなりそう…」
こうした思いが積み重なれば、モチベーションは下がり、職場への信頼も薄れていきます。
その結果、人材は安定せず、採用費や教育コストは膨らむのに、定着率は改善しない。
給与や環境改善に投資できず、さらに人が辞めやすい悪循環に陥ってしまうのです
■ 必要なのは“仕組みで守る環境”
事故や離職を減らすには、叱責ではなく仕組みづくりが必要です。
・危険が目に見えて分かる
・ルールが自然に守れるデザインになっている
・注意しなくても安心して動ける
その答えの一つが「わかる化サイン」です。
視覚的な仕組みを現場に組み込むことで、人と人の不一致や叱責を減らし、誰もが安心して働ける環境をつくることができます。
■ まとめ
叱責は短期的な効果しかなく、長期的には事故も離職も減らせません。
本当に必要なのは「人が安心できる仕組み」を整え、自然に安全行動を引き出すことです。

