第9回|「見える設計」は本当に高いのか― 投資対効果を数字で考えてみる ―

「効果は分かる。でも予算がない。」

これは現場でも経営でも、よく聞く言葉です。

では一度、感覚ではなく数字で整理してみましょう。

① 教育時間のコスト

例えば、

  • 新人10人
  • 教育時間:1人あたり20時間
  • 時給2,000円(指導者+新人の合算)

20時間 × 2,000円 × 10人= 400,000円

これが毎年発生するとどうでしょう。

しかも、

  • 説明
  • 注意
  • 再説明

が環境次第で半減するとしたら。

20時間 → 10時間になるだけで200,000円削減です。

② 離職コスト

新人が1人辞めると、

  • 採用広告費
  • 面接時間
  • 再教育
  • 生産ロス

ざっくり50万〜100万円かかると言われています。

もし年間2人減らせれば、100万円〜200万円。

これが毎年続きます。

③ 事故のコスト

軽微な事故でも、

  • 書類作成
  • 会議
  • 対策検討
  • 作業停止

管理者の時間を奪います

仮に、

  • 月1回ヒヤリハット
  • 1回あたり管理工数10時間
  • 管理職単価3,000円

10時間 × 3,000円 × 12ヶ月= 360,000円

“軽微なロス”だけでこの規模です。

重大事故なら桁が変わります。

④ 見えない「指示待ち時間」

現場で一番見えにくい損失は、

  • 迷い
  • 確認
  • 立ち止まり

です。

仮に1日合計30分、迷いによるロスがあるとします。

30分 × 20人 × 月20日= 200時間

時給1,500円なら
月30万円  年間で360万円

誰も“止まっていない”のに、静かに失われている時間です。

⑤ では、見える設計はいくらかかるのか

ここは会社規模によりますが、

  • 重点エリアの床表示
  • 交差点・充電エリアの設計
  • 明確な境界表示

これらは、設備投資というより環境整備投資です。

そして多くの場合、事故1件未満のコストで実施可能です。

比較するとどうなるか

合計すると、数百万円規模の可能性があります。これが毎年です。

問題は「目に見えないこと」

経営が判断しにくい理由は、

  • 事故は“起きてから”見える
  • 離職は“結果”で見える
  • ロスは“日常”に埋もれる

からです。

しかし、迷いを減らす設計は、これらを根本から減らします。

投資か、消耗か

見える設計をしない場合、

  • 教育を繰り返す
  • 注意を繰り返す
  • 会議を繰り返す

つまり、人件費で穴埋めし続けることになります。

設計するか、消耗し続けるか。

選択はそこです。