■ 安全担当者が背負う重圧
多くの物流現場では、安全担当者が任命され、労災防止の旗振り役を担っています。
日々の点検や注意喚起、監査対応までを一手に引き受け、職場を守ろうと奮闘している姿は珍しくありません。
一方で、担当者一人に役割や責任が集中しすぎている状況になってはいないでしょうか。
いくら声をかけても「また注意された」と受け止められ、改善提案は「費用対効果は?」と跳ね返される。そんな経験を持つ担当者もいるかもしれません。
努力を重ねるほど孤立し、現場の中で“浮いた存在”になってしまうケースも少なくないようです。
■ 「担当者任せ」が生む落とし穴
安全担当者にすべてを任せる体制には、見えにくい"思いのすれ違い"があるのではないでしょうか?
- 現場全員の行動が変わりにくい
担当者がいくら注意しても、周囲が「自分のことではない」と受け止めれば、行動の変化にはつながりません。 - 叱責が増え、雰囲気が悪くなることも
注意を繰り返すうちに声が強くなり、結果として職場の空気がギクシャクしてしまう。そんな悪循環が起きることもあります。 - 担当者の疲弊
“現場の安全は自分が守るしかない”という責任感の強い方ほど、疲れきってしまう…。そんな姿を目にした人もいるのではないでしょうか。
■ 安全は“全員参加型”でなければ根づかない
安全は、口頭注意や個人の努力だけでは限界があります。本来担当者だけが背負うものではなく、現場全員で育てる文化として考えるべきです。
しかし、そこでは、新たな仕組みが必要です。
例えば――
- フォークリフトの停止線や歩行帯のサインがあれば、誰が見ても共通の認識で動ける
- 輪止めサインがあれば、担当者が毎回声をかけなくても自然とルールが守られる
- 消火器前の「物置禁止」サインがあれば、置こうとした瞬間に自分で気づける
”ルールのわかる化サイン”は、何をするべきか?何をしてはいけないか?誰もが、認識することで
注意する側、される側のストレスを軽減します。
■ 企業の安全への取り組み
多くの企業では、安全担当者を中心に、日々の巡回や教育、ヒヤリハットの共有など、
やるべき取り組みはすでに行われています。
しかし、それだけでは事故や離職といった根本的な課題の解決にはつながりにくい場面もあるのではないでしょうか。
必要なのは、現場のメンバーを巻き込み、改善活動を進めていける仕組みをつくることです。
特定の担当者に注意や対策を背負わせるのではなく、スタッフ全員が自然にルールを理解し、行動できる環境を整える。
そのためには、サインや表示など、誰もが“見てわかる”共通の基盤を現場に組み込むことが効果的です。
こうした仕組みが整えば、担当者の負担は軽減され、事故の抑止や定着率の改善にもつながっていきます。
企業の安全対策は、“担当者の努力”に頼る段階から、“組織全体で育てる仕組み”へと
変わっていく必要があるのではないでしょうか。
■ まとめ
安全担当者に任せきりの体制では、どんなに努力を重ねても限界が見えてくることがあります。
安全とは、役職や担当の垣根を越えて、全員でつくり上げていく文化です。
そして、その文化を支えるのが、わかる化サインを中心とした“仕組み”です。
担当者が声を張り上げ続ける現場から、全員で安心を共有する職場へ。
