第1回では、工場の構内表示が続かないのは努力不足ではなく、油・水・粉塵、清掃、工程停止の難しさ、人の入れ替わり…といった 前提条件 の影響が大きい、という話をしました。

第2回では、その前提条件が厳しいからこそ、「全部を整える」より先に 優先順位を決めて、1エリアで小さく成功 させる方が現実的、という整理をしました。

そして第3回は、工場の中でも特に多い悩み――油・水・粉塵・清掃がある現場で、表示をどう設計すると続きやすいか をまとめます。


表示が続かない原因は「素材」だけじゃなく、“環境の攻撃”が複合している

油・水・粉塵・清掃がある現場は、表示にとって敵が多いです。

  • :粘着や塗膜の弱点を突いてくる
  • :剥がれ・浮き・汚れの定着を早める
  • 粉塵:読めない/滑る/“景色化”を加速する
  • 清掃:物理的に削る、薬剤で痛める、端から壊す

ここで起こるのは、「貼り方が悪い」だけではなく、
そもそも表示の想定が環境に合っていない という問題の方が多い印象です。

だから設計の出発点は、表示の見た目より先に “環境条件の整理” です。


まず確認したい「環境条件」チェック(5つ)

ここを押さえると、選択肢が勝手に絞れます。

  1. 油はどのタイプか(機械油/切削油/離型剤/食品系など)
  2. 水はどこから来るか(洗浄/結露/屋外からの持ち込み)
  3. 粉塵は何が主か(紙粉・樹脂・金属・木・原料粉など)
  4. 清掃の方法(水洗い/ブラシ/高圧/薬剤/頻度)
  5. 人と車の動線(タイヤで削られる場所か、人が踏む場所か)

この5つを言葉にできるだけで、表示の「続きやすさ」が大きく変わります。


“続く表示”にするための設計ポイント(考え方)

ここからは、具体の製品名ではなく、設計の考え方として整理します。

1)「端」が弱点。端から壊れる前提で設計する

現場でよく起きるのは、端がめくれる → 汚れが入る → 一気に読めない、の流れです。

なので設計としては、

  • 端がめくれにくい構造
  • 汚れが入りにくい構造
  • 清掃で引っかかりにくい形

ここを優先すると「続く」寄りになります。
逆に、端が弱いものは、どんなに綺麗に貼っても環境で負けやすい。

2)「読めるか」より先に、「読みたくなる形」にする

粉塵や汚れがあると、人は “読む” ことを諦めやすいです。
表示が増えるほど景色化しやすいのも、この環境の特徴です。

なので、

  • 情報を詰め込まない
  • 一目で意味が分かる(形・色・ピクト)
  • 遠目でも分かる(文字を小さくしない)

この「読みたくなる形」に寄せると、維持コストが下がります。

3)清掃が日常なら「清掃が勝つ前提」にする

清掃は、現場にとって正義です。
だから表示が清掃に負けるなら、表示側の設計が間違っていた可能性があります。

  • 清掃が当たる場所は、そもそも表示の位置を変えられないか
  • 変えられないなら、清掃に耐える設計か
  • さらに、定期交換を前提に運用する設計か

ここを決めるだけで、「続かない」ストレスが減ります。

4)「更新」を前提にすると、逆に続く

工場は変化します。工程、置き場、通路、設備。
更新を “例外” にすると、表示が止まります。

だから、

  • 変更が起きる場所は、更新しやすい方式に寄せる
  • 原状復帰が必要な場所は、戻せる設計に寄せる
  • 小さく直せる(部分更新)設計に寄せる

この考え方だと、続けるハードルが下がります。


根拠メモ(公式資料の考え方を“現場翻訳”すると)

安全に関する国や団体の資料を見ていると、「注意」や「教育」だけではなく、
危険箇所の明示や、誰が見ても同じ判断になる仕組み(見える化・標準化)を重視する考え方が整理されています。

油・水・粉塵・清掃がある現場は、まさに「個人の注意」に依存しやすい場所です。
だからこそ、表示は「強い素材」だけを探すより、環境条件に合わせて、迷いが起きない形に寄せる方が結果として安全に効くことが多いと感じます。


現場での“最初の一手”(おすすめの進め方)

第2回の話と同じで、ここでも「全部」はやらない方がいいです。

おすすめは、

  • 油・水・粉塵・清掃の影響が強いエリアの中から
  • 事故が近い場所/迷いが多い場所 を1つ選び
  • そこで「端」「見た目」「清掃」「更新」をセットで整えてみる

1エリアで成功すると、その現場の“勝ちパターン”が分かります。
その勝ちパターンを横展開する方が、早くて続きます。


選択肢のひとつ:スマートペーパーを使った「見ればわかる化サイン」

油・水・粉塵・清掃がある現場では、
「続く状態」を作るために、スマートペーパーを使った“見ればわかる化サイン”が合うケースがあります。

理由は単純で、工場の前提条件に合わせて、

  • 視認性(景色化しにくさ)
  • 更新性(変更に追従しやすさ)
  • 停止時間(段取りの負担)
  • 原状復帰(戻せる設計)

をセットで考えやすいからです。

もちろん向き/不向きはあるので、最初は1エリアで試すのが現実的だと思います。


まとめ

油・水・粉塵・清掃がある工場では、表示が続かないのは珍しいことではありません。
だからこそ、「強い素材」だけを探すより、環境条件に合わせて 端・視認性・清掃・更新 をセットで設計する。
そして最初は、1エリアで小さく成功して横展開する。
これが一番続きやすい進め方だと感じます。