
第5回|空ける設計は、なぜ守られるのか― 「守れ」と言わなくても守られる現場のつくり方 ―
前回、「何も置かない場所」が現場を守る、という話をしました。
今回はその続きです。
多くの現場でこう言われます。
「置くなと言っても、結局置かれてしまう」
「ルールはあるが、守られない」
本当にそうでしょうか。
もしかすると、守られないのは「人の問題」ではなく、
設計の問題かもしれません。
人は“禁止”より“構造”に従う
心理学ではよく知られていますが、人は強く言われたルールよりも、
環境の構造に従うそうです。
例えば、
・ここに物を置くな
と言われるより、
・物が置けない構造になっている
方が、自然に守られます。
つまり、行動を変えたいなら、人を変えるより構造を変える。
これが基本です。
なぜ「空ける設計」は守られるのか
空ける設計が守られる理由は、単純です。
① 判断が早くなるから
何もない場所は、
・見通しが良い
・足元が見える
・境界がはっきりしている
人はそこで迷いません。
迷わない場所は、
自然と“触られない場所”になります。
② 意味が伝わるから
ただの空白ではなく、
・床表示
・色
・境界線
・物理的ポール
などで明確に示されている場合、人は無意識に理解します。
「ここは特別な場所だ」と。
守れと言わなくても、空気が守らせます。
③ 置くと不自然になるから
設計が整っていると、そこに物を置いた瞬間、
・邪魔になる
・動線が崩れる
・違和感が出るこの
違和感がある環境は、自然と是正されます。
逆に、最初から雑然としている場所では、何を置いても違和感がありません。
「守れない現場」の共通点
守れない現場には、ある共通点があります。
・境界が曖昧
・空きスペースが目的不明
・物を置いても機能が変わらない
この場合、「ちょっとだけ」が積み重なります。
・今日は仮置き
・明日もそのまま
・いつの間にか常設
そして、本来守るべきだった場所が消えます。
デジタル時代だからこそ、空ける
AGV、充電設備、自動化設備。
これらは便利ですが、想定外が起きたときは、
・人が止め
・人が判断し
・人が動かす
ことになります。そのとき、
・視界が悪い
・物が散乱している
・境界が曖昧
では、判断が遅れます。
空ける設計は、有事のための余白です。
空けることは、効率を落とさない
よく言われます。「スペースがもったいない」
しかし、迷いによる停止時間、事故対応時間、指示待ち時間。
それらの方が、はるかに大きな損失です。
空けることは、
・面積の浪費ではなく
・時間の確保
なのです。
守れと言わない安全
本当に強い安全対策は、
・張り紙で守らせる
・朝礼で注意する
ことではありません。
守れと言わなくても、
・守るのが自然
・置かないのが普通
・迷わないのが当たり前
になる設計です。
次回予告
では、
- どこを空けるべきなのか
- どのように設計すれば自然に守られるのか
次回は、
AGV充電エリア・交差点・停止線を具体例に、
“空ける設計”を図解的に考えます。

