高床バースでの荷積み・荷下ろしは、日々の物流現場で欠かせない作業です。
しかしここでは、「慣れ」「油断」「急がされた」「集中力の低下」「体調不良」といった人の状態に起因するヒヤリハット、労働災害が発生しています。
本来は守られるべき基本動作――
・ドライバーはエンジンを切り、サイドブレーキをかける。輪止めを設置する
・リフターはドライバーに確認し管理者の指示に従い、作業を始める。
ところが、こうした当たり前のルールが守られず、脱輪・落下・接触事故へとつながっているのです。
■ 立場ごとの“思っていること・感じていること”
・トラックドライバー
「待たされた分を取り返したい。早く終わらせないと間に合わない」
・リフト運転者
「まさかブレーキの引き忘れなんてあるはずがない。とにかく早く作業を終わらせたい」
・ベテラン作業員
「慣れているから大丈夫」と油断しがち
若手リフター
「こんな簡単な作業で事故起こすなんて、ありえないでしょ」=過信
・管理者
「注意したいが、ドライバーやリフターの機嫌を損ねるのは避けたい。作業が終わったら話そう・・・」
・周囲の作業者
「あの人、疲れ気味じゃないのかな??」とりあえず自分の仕事を終わらせよ。
・倉庫管理主任者(本来の責任者)
「主任者を置くのは義務と分かっている。でも現場に立ち会えない。結局自分が作業するしかないのか…」
■ 高床バースで発生する事故事例
・サイドブレーキ・輪止め不備 → トラックが前進し、リフトが脱輪・落下
・爪を上げたまま進入 → 荷物や荷台の破損
・荷台からバックで退出 → 旋回ミスによる接触
・繁忙期の焦り → 確認動作を省き、事故に直結
「あり得ないはず」の行動が、慣れや油断、過信によって常態化しているのです。
■ 倉庫業法と現実のギャップ
倉庫業では、倉庫業法により倉庫管理主任者の選任が義務づけられています。
主任者は、建物・設備・従業員を含む倉庫全体の安全管理を担う立場です。
さらに一定規模以上の荷主には、物流統括管理者を選任する義務もあります。
にもかかわらず、現場では管理者が立ち会っていないケースが。
責任だけは存在するのに、実態が伴わない――。
このギャップは管理者の不満や不安を生み、現場スタッフからも「責任の押し付け」と感じられているのが現実です。
■ “わかる化”が現場を変える
事故を「注意」で防ぐのには限界があります。
必要なのは、誰もが自然に正しい行動を取れる仕組み=わかる化”です。
・サイドブレーキ・輪止め
→ ドライバーが必ず目にする場所に、分かりやすい表示を設置
・爪を下げて進入
→リフト待機場(充電場所)に作業手順を浸透させるサイン掲示
・旋回注意
→ バース床に、わかりやすいサインを表示し、習慣的に安全確認ができるようにする。
「注意しろ」ではなく、環境が行動を導くことが“わかる化”の最大の効果です。
■ まとめ
・高床バースでのリフト事故は、慣れ・油断・過信・急かし・体調不良といった人の状態が背景
・倉庫業法では管理者責任が定められているが、現場では立ち会い不在が発生している。
・解決のカギは「注意」ではなく、自然に守れる“わかる化”サイン
・“わかる化”は、現場のストレスや不信感を減らし、ワンチームで動ける環境づくりに直結する
