ある大手工場で、わかる化サインの施工管理に立ち会うため現場に入りました。入場ゲートでは「構内撮影禁止」のため、スマートフォンのカメラレンズに封印シールを貼っての入場。そこから、施工現場までは10分ほど歩くことになります。車道に沿った歩道を歩きながら、一本の電話に出ました。
すると、少し先で朝の体操をしていたグループのリーダー(60歳前後と思われる方)から、大きな声でこう注意されました。
「校内は歩きスマホ禁止です!!」
さらに続けて、メンバーに向かっても叱咤の声が響きました。
「君たちが気づいたら、すぐに止めさせなさい!!」
私は思わず「すみません」と頭を下げながら、心の中でこんなことを感じていました。
(え?工場内で電話するなら立ち止まって、ってのは聞いてたけど、屋外の歩道もNGなの?)
(そもそも、私が業者かお客様かもわからないのに、あの言い方はないでしょ…)
リーダーの声に、体操していたメンバーたちも少し白けた表情を浮かべていました。おそらく、彼らの心の声はこんな感じではないでしょうか。
「あんな言い方しなくてもいいのに…」
「初めて来た人かもしれないよね?」
「上から目線の指導って、なんかモヤモヤする…」
「あんたは言えても私には無理」
注意したリーダはどうお考えでしょうか?
「いつまで私に言わせるんだ!」
「なんでそんな事ができないんだ?」
注意する側、される側、それを見ている人。それぞれの立場で、思っていることや感じ方は違います。こうした“心の不一致”が、現場の人間関係をギクシャクさせる原因になることもあるのです。
でも本来、これは避けられたはずの出来事かもしれません。
たとえば「歩きながらのスマホ・電話は禁止」と一目でわかるサインが、その場所にあったなら―注意も不要で、嫌な気持ちになる人もいなかったのではないでしょうか?
ルールを伝えることは大切です。けれど、細かいことを注意しなくてもルールが自然と守られる仕組みがあるのが、良い職場づくりの鍵なのではないでしょうか。
この新シリーズでは、現場で実際に起きているちょっとした心のすれ違いを題材に、「見ればわかる化サイン」で解決できることを皆さまと一緒に考えていきます。
タイトルは――
『思ってる事、感じてる事』
ぜひ、共感や気づきを通じて、現場の改善のヒントを見つけていただければと思います。
