■ 3か月で辞める人が多い理由

物流現場では「新人が3か月で辞めてしまう」という声が後を絶ちません。
会社は求人広告を打ち、研修プログラムを整え、現場に配属する――やれることはやっているつもりでも、人は続かない。

その根本理由は、新人が抱える“見えない不安”を取り除けていないからです。

■ 研修と現場のギャップ

新人は入社前や研修中に、
「リフトは危ないので注意してください」
「階段では踏み外さないように」
「ここはヒヤリハットが多い場所です」 など説明を受けます。

しかし、実際に現場に出ると――

・大きなリフトが音を立てて迫ってくる恐怖

・荷物を持ちながら急かされて動く焦り

・現場特有の緊張感とスピード感

その現実は、説明で想像していたものをはるかに超えています。
新人は「頭では分かっていたはずなのに、体がついていかない」状態に陥り、ますます不安を募らせます。

■ 新人の頭の中は“不安だらけ”

慣れてしまえば何でもないことでも、新人にとっては判断がつかないことばかりです。

・「この線はなんでここだけ色が違うんだろう?」

・「リフトが来たら止まったほうがいいのかな?」

・「トイレっていつ行けばいい?黙って抜けていいのかな?」

・「リーダーがいないけど、この仕事続けてていいの?」

そんな疑問で頭がいっぱいの状態で、上司から「こら!そこに入るなと言っただろ!」と叱責されれば、心の中では「そんなこと聞いてません!」となるのです。

■ 不安を消す仕組みが定着につながる

新人が続かないのは能力不足ではなく、不安が解消されないまま現場に放り込まれるからです。
だからこそ、まず優先すべきは「不安を減らす仕組みづくり」。

・危険個所は一目で分かる

・やるべき行動がサインで示されている

・注意や叱責の前に“表示が教えてくれる”

これなら、新人は「なぜ怒られたのか分からない」状況に陥らず、安心して行動できます。
安心があって初めて、指導や教育が頭に入り、定着につながるのです。

■ 先輩にとっても安心を生む

現場の先輩たちにとっても、新人指導は大きな負担です。

・「危険な目に遭わせてはいけない」

・「ヒヤリハットを出してはいけない」

・「労災なんて絶対に起こせない」

こうしたプレッシャーから、先輩は必要以上に神経質になり、作業を教えることより「危なくないか」に意識を取られてしまいます。

ここにわかる化サインがあれば、

・危険な場所はサインが明示してくれる

・「入ってはいけない」「ここで止まる」が新人に伝わる

・監視よりも仕事の指導に集中できる

新人と先輩、双方の不安が軽減され、現場に余裕が生まれます。

■ まとめ

新人が3か月で辞めるのは、「能力が足りないから」ではなく「安心できないから」。
教官が丁寧に教えてくれる研修から、いきなり即戦力を求められる現場に放り込まれる落差――。
そこを埋めるのが「わかる化サイン」です。

新人には安心を。先輩には余裕を。
この二つを同時に実現できる仕組みが、離職を防ぎ、人を育てる第一歩となります。