第2回|貼っているのに、なぜ現場は迷うのか ― 安全表示と“人の行動”がズレる瞬間 ―

前回の記事では、工場や倉庫の安全対策は「やっていない」のではなく、
やっているけれど、役に立っていないケースが多いという話をしました。

今回は、もう一歩踏み込んでみます。

なぜ、これだけ表示を貼っているのに、
現場では人が迷い、判断に時間がかかるのでしょうか。

表示はある。でも「判断」は助けられていない

多くの現場で見られる安全表示は、
決して間違ったことを書いているわけではありません。

・フォークリフト注意

・立入禁止

・徐行

・安全第一

どれも正しい。
でも、現場で起きているのは、こんな状態です。

・見ているはずなのに、止まらない

・知っているはずなのに、迷う

・分かっているのに、判断が遅れる

これは「意識が低い」からではありません。

表示と行動が結びついていない それだけの話です。

人は「読む」より「動きながら判断」している

工場や倉庫の現場で、人は立ち止まって表示を読みません。

・フォークリフトに乗りながら

・台車を押しながら

・荷物を持ちながら

動きながら判断しています。

ところが、多くの安全表示は、

・壁の高い位置

・柱の裏側

・進行方向とは逆向き

など、「読めば分かる」前提で貼られています。

結果として、

・見えているが、使われない

・存在しているが、判断を助けない

というズレが生まれます。

表示が増えるほど、逆に迷う現場もある

もう一つ、よくある現象があります。

それは、表示が増えすぎて、どれを見ればいいか分からない現場です。

・あちこちに注意書き

・内容が重複

・優先順位が不明

この状態では、人は無意識に「見ない」という選択をします。

結果、本当に大事なルールまで埋もれてしまう。

これは安全意識の問題ではなく、情報設計の問題です。

3Sと安全表示がぶつかる瞬間

3Sに力を入れている企業ほど、こんな葛藤を抱えています。

・汚れた表示は見た目が悪い

・古い表示は整理したい

・でも剥がすと、ルールが消える

結果、

・残すべきか

・剥がすべきか

どっちつかずになる。

ここでも問題は、「安全か3Sか」ではありません。

役に立たない表示しか選択肢がなかった それだけです。

判断が必要な場所に、判断材料がない

現場で本当に判断が必要なのは、

・分岐点

・交差点

・停止位置

・侵入してよい・いけない境界

こうした「動きの切れ目」です。

しかし、多くの表示はそこにありません。

だから人は、

・自分の経験

・周囲の様子

・その場の空気

で判断する。

これが、人によって動きが変わる原因です。

有事になるほど、このズレは大きくなる

平常時は、多少のズレがあっても回ります。

しかし、

・システムトラブル

・事故

・想定外の作業

・人の入れ替わり

が起きた瞬間、このズレは一気に表に出ます。

「どこまで入っていいのか」
「どこで止まるのか」
「誰の判断を優先するのか」

迷った時間が、そのまま“止まり”になります。

次回に向けて

安全表示が機能しない理由は、意識や努力の問題ではありません。

・人の動き

・判断のタイミング

・現場の流れ

これと合っていないだけです。

次回は、
「判断が早い現場は、何が違うのか」
という視点から、

・海外の現場

・日本のあるある

を比べながら、「迷わない現場」の共通点を見ていきます。