
第1回|やっている。でも、役に立っていない ― 工場・倉庫の安全対策が“機能しない”本当の理由 ―
工場や倉庫の現場を見て回ると、
「安全対策が何もされていない現場」は、実はほとんどありません。
パウチされた注意書き、壁や柱に貼られたシール、
フォークリフト注意の表示、ラインテープや塗装による区分け。
多くの現場で、
「やるべきことは、ちゃんとやっている」 それが正直な実態だと思います。
・迷いがなくならない
・注意や指導が減らない
・同じようなヒヤリハットが起き続ける
のでしょうか。
「後回し」ではない。問題はそこではない
安全対策が後回しにされている、という表現を耳にすることがあります。
しかし、現場をよく知る人ほど、この言い方に違和感を覚えるはずです。
なぜなら、
・表示は増えている
・注意喚起もしている
・3Sにも力を入れている
決して「何もしていない」わけではないからです。
問題は、
やっていないことではなく、
やっていることが“役に立っていない”こと
ここにあります。
役に立たない安全対策が生まれる理由
多くの現場で見られるのは、こんな状況です。
・文字が小さく、立ち止まらないと読めない
・実際に判断が必要な場所とは違う位置に貼られている
・汚れて読めなくなり、結局剥がされる
・3Sを徹底すると「邪魔だから外す」対象になる
その結果、
・表示はある
・でも見られていない
・使われていない
という状態が生まれます。
ここで大事なのは、現場や管理者の責任ではないということです。
多くの場合、
「もっと役に立つ形でやりたい」
「でも、やる方法がなかった」
これが本音ではないでしょうか。
比較の軸が、ずっとズレていた
安全対策の検討では、よくこんな比較がされます。
・看板
・パウチ
・シール
・ラインテープ
・塗装
そして、それらと
「新しい安全表示」や「わかりやすい表示」を比べる。
しかし、ここに大きなズレがあります。
本当に比べるべきなのは、
モノとモノではありません。
役に立っていない仕事と
役に立つ仕事
この比較です。
見落とされがちな「人件費」というコスト
役に立たない表示は、
材料費が無駄なだけではありません。
・誰かが作る
・誰かが貼る
・汚れたら誰かが貼り替える
結局、誰かが注意でカバーする
この一連には、
必ず人の時間が使われています。
つまり、
役に立たない安全対策を続けることは、
安全投資ではなく、
役に立たない仕事に人件費を使い続けること、とも言えます。
これは、
現場を責める話ではありません。
管理者を責める話でもありません。
構造の問題です。
環境は、すでに変わっている
さらに今、現場を取り巻く環境は大きく変わっています。
・デジタル化
・自動化
・AGVや自動設備
・システムによる運用管理
人は、これらを覚えることで精一杯です。
しかし、
事故・トラブル・システム停止といった
有事の場面では、最後に頼れるのは人です。
そのとき、
・何を見て
・どう判断し
・どう動くのか
それを支える仕組みが、現場に残っているでしょうか。
次回に向けて
この連載では、
・「注意すれば守られる現場」ではなく
・「迷わず動ける現場」
をどう作るかを、工場・倉庫の実態に即して考えていきます。
次回は、
「貼っているのに、なぜ現場は迷うのか」
という視点から、表示と行動のズレを掘り下げていきます。

