第1回では、工場の構内表示が「続かない」のは努力不足ではなく、
油・水・粉塵、清掃、工程停止の難しさ、人の入れ替わり…といった “前提条件” の影響が大きい、という整理をしました。

※最初に一言だけ。私は工場で働いた経験はありません。
ただ、表示やサインの相談を受ける立場として工場の現場を見ていると、表示が続かない理由には共通点が多く、「気合」では

解決しない場面が多いと感じています。

そこで第2回は、「どの表示材が良いか」より先に、
どこから始めると失敗しにくいか(優先順位) を整理します。

工場の表示は、全部を一気に整えようとすると、だいたい途中で止まりやすいです。
範囲が広くなり、作業が増え、更新できず、いつの間にか崩れていく。
そして最後は「もっと注意しよう」「ちゃんと守ろう」という話に戻りがちです。

だから今回は、現場の負担が増えにくい“順番”をテーマにします

🔳なぜ「優先順位」を決めると続きやすいのか

構内表示って、やろうと思えばいくらでも増やせます。
注意喚起、禁止、置き場、通路、速度、歩車分離、立入禁止…。

でも表示が増えるほど、今度は逆に 景色” になってしまうことがあります。
読む側の情報処理が追いつかず、結果として「読まれていない」。

さらに工場では、清掃・洗浄・段取り替え・人の入れ替わりがあります。
表示を維持するだけでも負荷がかかるのに、量が増えると更新が止まりやすい。

なので最初から全部を狙わず、効果が出やすいところから小さく成功 → 横展開
この進め方の方が現実的だと思います。

🔳優先順位は、まずこの3つから整理しては・・・

ここからは「どこから始めるか」を、ざっくり3つに分けて整理します。
現場の事情は工場ごとに違いますが、相談を受ける中では、

この順番で話を組み立てると前に進みやすいことが多いようです。

優先①:事故・ヒヤリが起きやすい場所(命とケガ)

最初に見るのは、迷いよりも先に 危険が近い場所 です。

たとえば、現場でよく耳にするのは、

・人とフォークリフトが交差しやすい場所

・出入口まわり(見通しが悪い、動きが集中する)

・通路が狭くなるところ、曲がり角

・構内の交差点やヤードの動線が混ざるところ

こういう場所は、ルールがあっても「その瞬間に見えていない」と事故につながりやすい。
だから表示を整える優先順位としては、まずここから手をつけた方が早いケースが多いと感じています。

優先②:新人・外部者が迷う場所(品質と効率)

次に、ベテランは分かっているけど新人が迷う場所 です。

・置き場が曖昧で、仮置きが増える

・通路のルールが、口頭でしか伝わっていない

・工程間の受け渡し地点で、置き方・向き・順番が割れている

・「ここに置くな」が頻発する

ベテランは“いつもの感じ”で回避できても、新人は迷って止まる。
結果として効率も品質も落ち、注意が増える。
こういう場所は、表示を整える効果が比較的出やすい印象があります。

優先③:ルールが割れて、人間関係が荒れる場所(空気)

最後は、事故や迷いほど目に見えにくいけど、現場に効くポイントです。

・注意が増えて、言う側も言われる側も疲れている

・言い方が問題になって、改善が進まない

・ルールより“空気”で動いている

・注意・叱責が増えて、職場の雰囲気が重い

ここが厄介なのは、表示が崩れていること自体より、
崩れている状態が“注意の増殖”を生みやすいところです。

「注意する前に、迷いが起きない状態」に寄せる価値は、ここにあると思います。

🔳根拠メモ(公式資料の考え方を“現場翻訳”すると)

 安全に関する国や業界団体の資料を見ていると、共通して出てくる考え方があります。
それは「気をつける」だけで回すのではなく、

・危険箇所やルールを分かる形で示す

・誰が見ても同じ判断になるように整える

・作業標準を“見える化”して、習熟度の差を埋める

といった、仕組み側を整えて事故や迷いを減らす方向です。

工場は前提条件が厳しい分、この“仕組み側”を整えるほど、現場がラクになるケースが多いように感じます。
注意や教育を否定するのではなく、注意が必要ない状態に寄せる
優先順位を決めるのは、その入口になると思います。

🔳迷わないための“選定チェック”5項目

「優先順位は分かった。でも現場で決めきれない」
そんなときは、次の5つでチェックすると整理しやすいです。

・頻度:迷い・止まりが週に何回起きているか

・危険度:事故・ヒヤリに近いか(人と車が混ざるか)

・影響範囲:止まる人・工程がどれだけ出るか

・更新性:レイアウト変更が多い場所か(変化が前提か)

・停止時間:工程を止めずに直せるか(分割でできるか)

この5つで見ると、「いま整えるべき1エリア」が見えてくることが多いです。

🔳最初の一手は「1エリアだけの小さな成功」がいちばん強い

構内表示を続けるコツは、最初から大規模にやらないことだと思います。

おすすめは、

・1つの交差点(歩車分離・注意喚起)

・または 1つの置き場(仮置き・迷い・ルール割れ)

このどちらかに絞って、そこで“完成度”を上げること。

完成度というのは、見た目だけではありません。
第1回で整理した判断軸(耐久性・視認性・更新性・停止時間・原状復帰)を、

その1エリアでちゃんと満たして「続く状態」を作る、という意味です。

小さく成功すると、現場の納得が生まれて横展開が一気にラクになります。
逆に最初から全体を触ると、途中で止まりやすい。これは本当に多いです。

🔳選択肢のひとつ:スマートペーパーを使った「見ればわかる化サイン」

工場の前提条件に合わせるなら、
スマートペーパーを使った「見ればわかる化サイン」という選択肢もあります。

ポイントは「きれいに見せる」ことだけではなく、

・視認性を上げやすい(景色化しにくい形にできる)

・工程への影響を小さくしやすい(停止時間を抑えられる)

・変更・見直しを前提に運用しやすい(更新性)

・必要なら原状復帰も考えられる(原状復帰)

という方向に寄せやすいことです。

もちろん、現場条件によって向き/不向きはあります。
だからこそ「まずは1エリア」で試して、合う条件を掴むのが失敗しにくいと思います。

🔳まとめ

工場の構内表示は、全部を整えるよりも “順番”を決めた方が続きやすい。
最初は、事故・迷い・ルール割れ(空気)に効く場所から、1エリアで小さく成功させる。
そのうえで、工場の前提条件に合う手段として「見ればわかる化サイン」も選択肢になるでしょう。