これまでの回では、わかる化サインの内製化について、
- 現場改善
- 安全対策
- 外注と内製の考え方
といった視点から整理してきました。
ここまで読んでいただいた方の中には、
こんなことを感じている方もいるかもしれません。
「これ、うちの会社でもビジネスとして成立するのでは?」
実際に、すでに販売実績があり、
新規ビジネスとして成立しているケースは存在します。
一方で、検討は始まったものの、
事業として定着しなかったケースがあるのも事実です。
この違いは、会社の規模や熱意の差だけで生まれているわけではありません。
■ わかる化サインビジネスは、物流企業が着手しやすい理由
このビジネスモデルの最大の特徴は、
自社の現場そのものを使って説明できるという点にあります。
- 自社倉庫にわかる化サインを施工し
- 実際に運用し
- 改善を重ねている
自社の現場を、そのままショールームとして使えることです。
カタログや説明資料を用意するよりも、
「実際にルールをわかる化した現場をご覧になりますか?」
と案内できることは、
営業にとって非常に大きな強みになります。
■ 営業が「売る」より「案内する」形になる
このモデルでは、営業の役割そのものが変わっていきます。
- 実際の施工状況が見られる
- 動線や表示の使われ方が分かる
- 現場の空気感まで伝わる
結果として営業は、「売り込む役割」よりも案内する役割に近づいていきます。
さらに、物流倉庫の周辺には、
- 他の物流倉庫
- メーカーの工場
が集まっているケースも多く、
営業効率の面でも、物流企業ならではの環境が整っています。
■ それでも新規ビジネスが簡単ではない理由
一方で、このモデルが簡単に広がらない理由もあります。
① 既存業務との優先順位の問題
新規ビジネスは、どうしても既存業務と並行して進めることになります。
その結果、意図せず既存業務が優先されやすくなる構造が生まれます。
これは、個人の意欲や能力の問題ではなく、業務の性質によるものです。
② 従来の請負型とは異なる対応が求められる
このビジネスでは、
- 相手の課題を丁寧に聞き取る
- すべてが初めての商談になり、価格提示が難しい
- 同業者同士だからこそ聞きにくい話もある
といった場面が多くなります。
従来の「請負型営業」とは異なり、提案そのものが求められる点も特徴です。
③ 顧客が知らない商材であること
わかる化サインは、多くの顧客にとって初めて触れる商材です。
そのため、
- セールストークの整理
- プレゼン資料の作成
- サンプル制作
など、事前準備に時間がかかります。これらを既存業務と同列に扱うと、
十分な時間を確保しにくくなり、結果として後回しになってしまうケースも少なくありません。
つまり、まず自分たちが十分に理解することが前提になります。
■ わかる化は、新規事業にとどまらない
この取り組みは、単なる新規ビジネスにとどまりません。
- 安全対策に積極的な企業
- 現場改善を自ら考える企業
- 人材育成に向き合う企業
こうした姿勢は、
- 取引先
- 採用活動
- 視察対応
- 株主・投資家
にも、自然と伝わっていきます。 わかる化サインは、企業の考え方そのものを示す手段になり得ます。

