第2報を配信したあと、
「示唆が多く、とても興味深かった」
「社員に共有したい」
そんな強いメッセージをいただきました。

自動化が進む倉庫で、
“人が感じる小さな違和感” がどれほど価値あるものか。
その重要性に、多くの方が共感してくださったようです。

今回のAmazon倉庫火災は、
まさにその「違和感」がどこかで途切れ、
異常が“発覚した時にはもう広がっていた”可能性があります。

午前10時に火災が発覚したという報道。
けれど、火災は本当に10時に突然始まったのでしょうか。

焦げた匂い。
いつもと違う熱。
わずかな白煙。

誰かが気づいていたのに、
“自分の持ち場ではない”と判断して報告されなかったのかもしれません。
あるいは、人がロボットの補助作業に追われ、
周囲に注意を向ける余裕そのものがなかったのかもしれません。

現場の「気づき」が弱くなると、
危険は静かに、しかし確実に広がっていきます。

■ 自動化が進むほど、“見えない危険”が増える

いま物流現場で起きている自動化・デジタル化・ロボット化は、
便利で未来的な半面、まだまだ“過渡期の技術”
です。

・リチウムイオン電池は依然として発火リスクを抱えている
・電動設備の消火方法は特殊で、現場が理解しきれていない
・サイバー攻撃が入れば自動化設備そのものが麻痺する
・異常時の対処手順も企業ごとにバラつきがあり、共有されていない

「便利」「効率的」だけを見て安心するには、まだ時間が必要です。
今回の火災は、その現実を改めて浮き彫りにしました。

つまり、
技術が現場の安全を“全て守れる時代”は、まだ来ていない。
ということです。

■ デジタル管理者とアナログ経験者の“断絶”

自動化が進むと、現場を管理する側には
デジタルに強い若手や中堅が選ばれます。

一方、危険を察知する“アナログの目”を持つベテランは、
ロボット中心の現場で「自分の居場所」を失いかねません。

この2つの価値観がうまく交わらないと、
現場では次のようなギャップが生まれます。

デジタル管理者
「ロボットが動くんだから現場は安全なはず」

ベテラン
「ロボットが動いても、危険は消えていない」

その価値観の段差が大きくなると、
ベテランが現場から消えていく現象が起こります。

すると、
火災や事故の“予兆”に気づける人がいなくなる。

今回の火災はその象徴的な出来事だと私は感じています。

■ 人間関係が崩れる前に、崩れる原因をなくすべき

人間関係が悪くなる原因は、能力差でも年齢差でもありません。
もっと根本的なところにあります。

それは、
ルールが見える形になっていないからです。

・どこに荷物を置いてはいけないのか
・どこが通路で、どこがロボットの動線か
・どこが危険エリアか
・どこが避難経路か

これらが“見えない状態”だと、自然と誤解が生まれ、
注意・指摘の場面で摩擦が起こり、
現場の空気はどんどん悪くなります。

そして、空気が悪い現場では、
誰も“気づいても言わない”環境が育ちます。

これが最も危険です。

■ わかる化サインは、安全と人間関係を守る“装置”

自動化された倉庫で最も必要なのは、

「誰が見ても、同じ判断ができる現場」
= わかる化された現場
です。

わかる化サインは、単なる表示ではありません。

・危険を見える形にする
・判断を迷わせない
・誰もが同じルールで動ける
・人間関係の摩擦を減らす
・緊張感を自然に保つ
・“小さな違和感”に気づける環境をつくる

これらを実現するための“現場の安全装置”です。

かる化が整った職場は、
技術が未成熟であっても、
人の判断力によって危険を回避できます。

■ まとめ

自動化の時代になっても、
安全を守る最後の砦は “人の気づき” です。

しかし、その“気づき”が生まれるかどうかは、
現場がわかる化されているか にかかっています。

今回の火災は、
便利さだけを見て突き進む前に、
人が判断しやすい現場を作る必要があると教えてくれます。

技術の過渡期だからこそ、
わかる化サインが現場を守る時代に入っています。