■ 注意・叱責が増える職場の共通点

「何度言っても直らない」「また同じミスか」——
そんな言葉が日常的に聞こえる職場ほど、注意や叱責が“日常業務”の一部になっています。

しかし、それが習慣化するほど、スタッフは次第に“注意されないために動く”ようになります。
この状態になると、行
動は“主体的”ではなく“防衛的”に変わり、改善提案やチームワークは弱まっていきます

一見、厳しい指導は効果的に思えるかもしれません。
しかし実際には、注意や叱責を繰り返すほど“心理的安全性”が低下し、
現場の声が出にくくなるという悪循環が起きているのです。
スタッフは“間違えないように”動くようになり、
“良くしよう”という意識は徐々に薄れていきます。

※米ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授による研究では、
「叱責や批判が多い職場ほど、従業員は発言・提案・質問を控えるようになる」ことが報告されています(心理的安全性の概念)【注1】。
また、行動心理学においても、罰や恐怖による行動変化は短期的な効果しか持たず、
長期的なモチベーションや改善行動にはつながらないとされています【注2】。

■ 問題は「意識」ではなく「構造」

多くの管理者が「何度も言えば伝わる」と考えがちですが、
実際には“伝わらない環境”ができてしまっているケースが多くあります。

例えば、

・危険箇所のサインが擦れて見えづらい

・動線が複雑で、リフトと歩行者の交差が多い

・注意事項が掲示板の中だけで、現場では実感できない

こうした“環境のわかりにくさ”が、行動のズレやヒヤリ・ハットを生んでいるのです。
つまり、「意識の問題」ではなく、「仕組みの問題」なのです。

■ わかる化サインで“自然に動ける職場”を

床や壁に「止まれ」「ここで確認」「リフト優先」といった行動の“きっかけ”を明確にすることで、
人は意識しなくても安全行動をとるようになります。

これは、注意や叱責ではなく「見ればわかる」環境設計によって、
自然と人が動ける職場をつくる考え方です。

デジアナプリントシステムによるわかる化サインは、
こうした“仕組みで人を支える”ための有効なツールです。
叱責に頼らず、環境で行動を導く。
その変化が、コミュニケーションの質や職場の雰囲気を大きく変えていきます。

■ まとめ

注意、叱責がなくても人が動く職場とは、
「人を変える」のではなく「環境を整える」ことから始まります。

現場で働く一人ひとりが、自然に安全行動をとれる仕組み。
それが、これからの荷役現場に求められる“新しい改善文化”ではないでしょうか。

【参考・脚注】

【注1】Amy Edmondson(1999)“Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams,” Administrative Science Quarterly
【注2】B.F. Skinner(1953)“Science and Human Behavior,” The Free Press/厚生労働省「職場の心理的安全性とヒューマンエラー防止」報告書(2020)