■ 投資対象として後回しにされる「安全」
経営会議などで新たな設備投資の話になると、物流倉庫の「安全対策」は優先順位が低くなりがちです。
マテハン機器の導入、デジタル化、在庫管理システムの更新といった“攻めの投資”が先行し、
安全対策は「現場の工夫でなんとかなる」という位置づけで後回しにされるケースが少なくありません。
一見すると、それでも現場は回っているように見える。
しかし、実際には見えないリスクが静かに積み重なっていることが多いのです。
■ 一度の事故が利益を吹き飛ばす
倉庫での事故は、一見「現場の問題」のように思われがちですが、経営にとっては直接的な損失です。
例えば――
・労災事故が起きれば、作業停止や調査対応で物流全体が止まる
・損害賠償や保険対応だけでなく、納品先との信頼関係の損失が発生
・一度失った信頼は、広告や営業では取り戻せない
数百万円の安全対策費を「もったいない」と先送りしていた結果、数千万円規模の損害を被る。
これは決して珍しい話ではありません。
■ 「安全」は攻めの投資と切り離せない
マテハン機器やデジタル化への投資はもちろん重要です。
しかし、それらを本当に活かすには、現場が安全に、安定して機能していることが前提です。
どれほど最新のシステムを導入しても、作業者が不安を抱えたままでは運用は安定しません。
たとえば、歩行帯とフォークリフトの動線が曖昧なままだと、衝突リスクは消えず、ヒヤリハットが続出します。
「安全」は“攻めの投資”を支える土台なのです。
■ 現場を巻き込んだ安全の仕組みこそ、最大の利益防衛策
安全投資は、単なる設備導入ではありません。
「安全担当者がチェックする」だけでは限界があり、現場全員が理解・納得・参加できる仕組みがあってこそ機能します。
例えば、わかる化サインのように、
・「ここで止まる」「ここには入らない」などのルールを、誰でも瞬時に理解できる形にする
・新人・外国人スタッフでも迷わず動けるようにする
・不安や曖昧さを減らすことで、叱責や衝突のきっかけを減らす
こうした仕組みがあると、現場が自律的に安全を保ち、事故を未然に防げるようになります。
■ 安全への投資は「コスト」ではなく「利益を守る仕組み」
安全対策は、数字で見えにくい分、投資判断が後回しにされやすい領域です。
しかし、“利益を守る”という経営視点で考えれば、安全への投資こそ最も費用対効果の高い分野です。
人が安心して働ける現場は、人材が定着し、教育コストが積み上がり、熟練度が上がり、事故リスクが下がります。
結果的に、企業全体の損益構造は安定し、他の攻めの投資も活きてくる。
安全投資とは、単なる「守りのコスト」ではなく、企業経営の根幹を支える「仕組み」なのです。
■ まとめ
安全対策は、後回しにされるべきものではありません。
事故や離職が起きてから対処するのではなく、“起こさない仕組み”を先に整えることが、経営にとって最も賢明な選択です。
わかる化サインをはじめとする現場の仕組みづくりは、単なる現場改善ではなく、利益と信頼を守るための投資です。
今こそ、安全への投資の意味を、経営視点で捉え直すときではないでしょうか。
