■ 低床バースに潜む構造的な問題
倉庫内の労働災害や品物破損の責任は比較的整理されています。
しかし、低床バース(トラックヤード)では、トラックドライバーが荷物の積み下ろしに関わるケースが多く、事故が発生した際の責任範囲が非常にあいまいです。
・倉庫に受け渡した後の破損 → 倉庫責任
・運送中の破損 → 運送会社責任
・出荷時の破損 → 荷主責任
ところが実際には、「どこからが受け渡しなのか?」という境界がはっきりせず、現場の混乱を招いています。
■ ドライバーが手伝う文化とそのギャップ
低床バースでは、ドライバー自身が荷物を下ろす、あるいは倉庫スタッフを手伝う文化が残っています。
しかし、これには多くのリスクが潜んでいます。
・荷役作業員の本音
「手伝ってくれるのは助かるけど、危ない。怪我しても知らんで」
・ドライバーの本音
「ここのリフターは下手やからヒヤヒヤするわ」
「ちゃんと積んでくれてるかな、荷崩れしたら自分の責任やし…」
・荷主の経営者の声
「品物に破損があれば、どんな原因であれメーカーが責任をとります」
→ こうしたスタンスが、倉庫や運送会社に不満や不安を残す一因になっている。
■ 現場で起きている典型的な事故
・ドライバーが荷役を手伝う最中に指詰め・転倒
・パワーゲート作業中の荷物落下・巻き込まれ
・リフトが引き取る際の接触事故
・荷崩れによる品物破損と責任の押し付け合い
■ 管理者・中間管理層の悩み
・「ルールを決めても、徹底できない」
・「ドライバーを待機させたいけど、納得してもらえない」
・「責任がはっきりしていないから、現場にプレッシャーが集中する」
一方で、大手企業の一部では「ドライバーは手伝わない」「待機所で待つ」という仕組みを導入し、サイン表示や導線管理によって責任を明確にする動きも出ています。
■ “わかる化”による解決
責任の所在が不明確なままでは、現場は常に不安を抱えます。
そこで必要なのが、誰がどこまで責任を持つのかを“わかる化”することです。
・ドライバー待機所の設置とサイン表示
→ 「ここで待機」「荷役には関わらない」を明確に示す
・責任範囲のピクト化
→ 「輪止め」「扉開放」はドライバー、「積み下ろし」は倉庫スタッフ
・破損時の対応フロー掲示
→ 「荷主責任/倉庫責任/運送責任」の整理を掲示し、押し付け合いを防ぐ
■ まとめ
低床バースは、責任の境界があいまいで、事故や破損が起きやすい環境です。
・荷役者:「助かるけど危ない」
・ドライバー:「心配だから手伝いたい」
・管理者:「ルールが徹底できない」
・荷主:「破損はメーカー責任」
このギャップが現場の混乱を生み、事故や不信感を助長しています。
解決のカギは、“注意喚起”ではなく、わかる化によって責任範囲を見える形にすること。
ルールが曖昧なままではなく、環境そのものを「自然に正しい行動へ導く」仕組みに変えることが、低床バースでの安全と信頼関係を築く第一歩です。
