■ 高床バースで最も多い作業者の事故
物流現場の高床バースは、荷役効率を高めるために不可欠な設備です。
しかしその一方で、転落事故が最も多い場所でもあります。
作業中にバランスを崩したり、荷物を動かそうと先端に寄りすぎて落下するケースは後を絶ちません。
多くの現場では、
・1.1mライン(フォークリフトの爪の長さ)
・2mライン(人の立入禁止)
といった基準線が設けられている現場が多くあります。
ところが、このルールの意味を正しく理解している人は一部に限られ、しかもテープは1か月も経たずに 摩耗・汚損し、見えなくなるのが実態です。
さらに、荷主ごとにパレット寸法が異なる、あるいは長尺物が混ざるなど、ルール通りに作業できないケースがあります。
■ 立場ごとの“思っていること・感じていること”(例)
・管理者
「ラインを守らないと危険だ。と言うのはわかるけどね。。。」
・リフト作業員
「荷姿によっては爪を寄せないと積み降ろしができない。ちょっと現実的じゃないよな」
・入荷作業員
「納品物のサイズがバラバラで、ルールがそもそも当てはまらない」
・出荷作業員
「これって、何のラインだったかな???」
・新人スタッフ
「どこまで近づいていいのか分からない。先輩のやり方を真似するしかない」
・ベテラン作業員
「すぐ剥がれるし、何のラインか知ってる者も少ないやろな」
・経営層・本社管理責任者
「拠点ごとに商品が違うから現場任せにしている」
■ ギャップが事故を呼ぶ
・管理者は「守らせたい」
・現場は「効率を優先したい」
・新人は「分からない」
・ベテランは「慣れで判断」
・経営層は「現場任せ」
この思いのギャップが、転落事故を繰り返す根本原因なのです。
■ 解決のカギは“わかる化”
声掛けや注意だけでは事故は防げません。必要なのは誰もが見れば理解できるサインです。
・1.1mライン=爪止めを幅広ライン+文字表示で徹底
・2mライン=人立入禁止を“赤ゾーン”として面で表現
・床だけでなく壁や柱にもピクトを表示し、荷で隠れても見えるように
・外国人スタッフ・新人でも理解できる多言語ピクト
・耐久性のある素材で表示し、定期的に点検・補修する仕組み
「守れ!」と叫ぶのではなく、自然に守れる仕組みを環境に埋め込むことが、事故ゼロへの近道です。
■ まとめ
・高床バースの転落事故は業界全体で最も多い重大リスク
・背景には、立場ごとに異なる“思っていること・感じていること”のギャップがある
・わかる化サインと仕組み化で、叱責せずとも自然に行動できる環境をつくることが重要
