ここまで、わかる化サインと内製化について、現場・管理・経営、それぞれの視点から整理してきました。

・テープが剥がれる

・塗装がすぐ消える

・パウチが増えて誰も見なくなる

・テスト導入をして、そのまま止まる

こうした出来事は、どれか一つが悪いわけではありません。

多くの場合、現場の実態と、仕組みの考え方がズレたまま進んでいるそれが原因だと感じます。

最終回となる今回は、「内製化をやるべきか、やらないべきか」という答えを出す回ではありません。

どう考えればいいのかを整理して、終わる回です。

■ 内製化はゴールではない

まず、はっきりさせておきたいことがあります。

内製化は、目指すべきゴールではありません。

・内製化=正解

・外注=間違い

という話でもありません。

内製化は、数ある選択肢のひとつです。

会社の状況によっては、

・外注の方が合っている

・今はまだ時期ではない

・あえてやらない

という判断も、十分に意味のある意思決定です。

■ 「やる・やらない」ではなく「合う・合わない」

このシリーズを通して見えてきたのは、内製化が向いている会社と、

そうでない会社が確実に存在する、という事実です。

そこで最後に、判断のための“考える材料”を整理しておきます。

■ 判断のための5つの視点

答えは書きません。考えるための軸だけを置いておきます。

① 拠点数

・拠点が一つなのか

・複数拠点を持っているのか

拠点が増えるほど、ルールの再現性や統一性が問われます。

② タイミング

・新設

・移転

・拡張

何かが動くタイミングは、考え方を切り替えやすい時期でもあります。

③ 人材

・現場を理解している人がいるか

・現場の言葉で説明できる人がいるか

特別なスキルより、現場感覚のある人が重要です。

④ 社内文化

・現場改善を「やらされるもの」にしていないか

・ルールを共有しようとする土壌があるか

ここが合わないと、どんな手法でも定着しません。

⑤ 目的

・安全対策なのか

・効率化なのか

・将来的な外販なのか

目的が曖昧なまま進めると、途中で止まりやすくなります。

■ 「やらない」という判断も、立派な結論

この5つを整理した結果、「今はやらない」という結論に至る会社もあると思います。

それは、逃げでも失敗でもありません。

むしろ、考えた上での判断です。

何も整理せずに導入するより、よほど健全です。

■ それでも、現場は今日も困っている

一方で現場では今日も、

・迷いながら歩く人

・判断を記憶に頼る作業

・注意する側、される側のストレス

が積み重なっています。

本来、現場が求めているのは、

・叱られないこと

・覚えなくていいこと

・見れば分かること

だったはずです。

わかる化サインは、管理のための道具ではなく、人を楽にするための道具です。

■ このシリーズで伝えたかったこと

この10回を通して、伝えたかったことは、とてもシンプルです。

・わかる化は「貼ること」ではない

・内製化は「作業」ではない

・正解は一つではない

・判断には整理が必要

そして何より、現場で起きていることを、ちゃんと見て、ちゃんと考えること

それが、すべての出発点だと思います。

■ おわりに

文章だけでは、どうしても伝えきれない部分があります。

床の広さ、動線の重なり、リフトのスピード感。

そういったものは、現場でしか分かりません。

機会があれば、現場を見ながら、意見交換できればと思います。このシリーズが、皆さんの判断を少しだけ楽にする材料になっていれば幸いです。