「改善の提案はありがたいんですが、効果測定のデータってありますか?」
物流倉庫の安全担当者から、私が見ればわかる化サインをご提案した際に、最も多くいただく言葉です。確かに、投資判断には“根拠となる数字”が必要です。
でも、こう聞き返したいのです。
■ あなたの現場、指差し呼称は実施されていますか?
「はい、床に表示がありますよ」と答える方もいます。
しかし、私たちが実際に現場を見ると、表示が無いもしくは、表示があるだけで、誰も指差しも呼称していない。指差しをやっているのは、ルールを決めた安全担当者様だけという事もしばしばです。
つまり、やるべきルールはあるが、実際には“誰もやっていない”という現場がほとんどです。
■ ミスが6倍になるという“明確なデータ”があります
指差し呼称は鉄道会社から始まり、工場、病院などで実験データをとられていて以下のような結果が出ています。
- 声を出して指差し呼称をした場合:エラー指数 1
- 声を出さず、指だけ差した場合:指数 3
- 目視のみ:指数 6
- 何もしない場合:指数 10

つまり、指差し呼称をきちんとやることで、ミスのリスクは6分の1になるのです。
■ 問題は「サインの有無」ではなく「実施されていないこと」
指差し呼称は、効果が実証されている安全行動です。
なのに、それが実際には行われていない──これは、“やらない現場”を放置しているということ。
そして、やっていないことでミスが6倍になるというリスクを、見て見ぬふりしていませんか?
■ わかる化サインとは、「やれ」と言わなくても人が動く仕組み
わかる化サインは、「安全担当者が注意する」ためのツールではありません。
“自然とやってしまうようにするため”の仕掛けです。
「前方ヨシ!」
「荷台ヨシ!」
こうしたサインを床やバースに貼ることで、行動のきっかけを作ります。
それは、「やる人だけがやる安全」ではなく、「誰でもできる安全」への第一歩になります。
■ まとめ:「改善データがない」のではなく、「危険データを無視している」
安全とは、「事故が起きてから考えるもの」ではありません。
“やっていない”という現実があるなら、それだけで導入の理由は十分です。
「指差し呼称でミスは6倍減る」という事実を前に、
まずは“やられていない”現実に目を向けていただきたいのです。