2026年2月18日、アサヒグループホールディングスは、2025年に発生したサイバー攻撃に関する再発防止策を発表しました。

報道では情報漏えい件数やセキュリティ体制の強化が中心に語られていますが、物流・製造の現場視点で見ると、

もう一つ重要なテーマが浮かび上がります。それが「システムが止まったとき、現場はどう動いたのか」という問題です。

■ 直接的な損失と、見えにくい間接的損失

今回の事案では、約11万件超の個人情報漏えいが確認され、受注や出荷業務に影響が出たとされています。

サイバー攻撃による被害は、しばしば「情報漏えい件数」や「復旧費用」で語られますが、実際の企業活動ではそれ以上に大きな影響が発生します。

例えば過去の海外製造業の事例では、システム停止により出荷遅延や生産調整が発生し、数週間から数ヶ月にわたってサプライチェーン全体に

影響が広がったケースもあります。

これらは決算上「機会損失」として表面化しにくく、ブランド信頼の低下や現場負担の増加という形で長期的な影響を残します。

今回のアサヒのケースでも、物流指示系統が一時的に停止し、現場では手作業での対応が行われたと報じられています。

ここに、現場継続性という観点から注目すべきポイントがあります。

■ システム停止時、現場では何が起きたのか

デジタル化された倉庫や工場では、WMSや基幹システムが作業順序や出荷指示を管理しています。

これらが停止した場合、現場では次のような課題が発生する可能性があります。

・出荷優先順位が分からない
・保管場所の判断ができない
・新人作業者が動けなくなる
・確認作業が増え、作業速度が低下する

報道では「手作業で出荷を継続した」とされていますが、現実には単純な代替では済まないケースが多く、

ベテランの経験や記憶に依存した判断が増えた可能性も考えられます。

また、デジタル化された運用とは異なる手順へ一時的に切り替えることで、動線や作業方法を現場で再構築する必要があった可能性もあります。

■ デジタル時代だからこそ問われる「現場設計」

DXや自動化が進むほど、システム停止時の影響は大きくなります。

これはIT部門だけの課題ではなく、現場の運用設計そのものに関わるテーマです。

システムが動いている前提で最適化された現場は、停止時に混乱しやすくなります。

一方で、作業エリアや動線、停止位置などが視覚的に整理されている現場では、一定の業務を継続できる可能性が高まります。

今回の事例は、「セキュリティ対策」と「現場運用」が分断されたテーマではないことを示しています。

サイバー攻撃はITの問題として語られがちですが、最終的に影響を受けるのは現場そのものです。

■ これからの課題 ― 現場継続性という考え方

サイバー攻撃、自然災害、人手不足など、予測できない事態が増える中で、「止まらない現場」をどう設計するかは今後の重要なテーマになると考えられます。

システムを強化することはもちろん重要です。

しかし同時に、システムが止まった場合でも最低限の業務を継続できる設計が求められています。

今回のアサヒの事例は、その必要性を現場レベルで考えるきっかけになるのではないでしょうか。

後は、デジタル化と並行して「現場が迷わず動ける仕組み」をどう構築していくのか。物流・製造の現場にとって、あらためて問われるテーマとなりそうです。